一眼レフカメラのレンズを購入する時に悩むのが焦点距離です。
そもそも焦点距離とは、かなりざっくり言うと「画角」を表した数値みたいなものです。そして、画角とは「画面の見え方」です。
なので、焦点距離を変えると画面の見え方が変わるのですね。
そして、これは一眼レフカメラを使ったことのない人にとっては分かり難いものだと思います。
私も初めてレンズを買った時は、「焦点距離18㎜-55㎜」などと表記されているのを見ても、一体どんな写真が撮れるのかさっぱり分かりませんでした。そして、「これはコンデジでいう光学何倍ズームなんだろう」と少し的の外れたことを考えていました。
なので、今回は「自分に適した焦点距離を見つけよう」ということで、レンズの焦点距離の選び方とその特徴について書きたいと思います。
焦点距離の見え方
レンズの焦点距離は、例えば「18㎜-55㎜」などと表記されます。
これは焦点距離18㎜から焦点距離55㎜の間で変化可能なことを表します。つまり、その間でズームできるということです。ちなみに、中にはズームできない単焦点レンズというのものあります。
まずは、各々の焦点距離の見え方を比べてみたいと思います。
こんな感じで全て同じ場所からズームを使い焦点距離だけ変化させています。
殺風景ですが中央にある紫陽花を撮ります。
ちなみに、一眼レフカメラには大きく分けて「フルサイズ機」と「APS-C機」という2種類があります(他にも色々ありますが)。
NikonでいうとD7200、D5500、D3300などがAPS-C機です。D750、D810など十数万〜数十万円する高価なものがフルサイズ機となります。はじめて一眼レフカメラを買う方は大体APS-C機だと思います。
そして、フルサイズ機とAPS-C機を比べる際の注意点としては、フルサイズ機よりもAPS-C機の方が画面の見え方が約1.5倍に拡大されるということです。
なので、APS-C機での画面の見え方を考える場合は、フルサイズ機の焦点距離を約1.5倍にして考える必要があります。これを「35㎜換算」や「換算○○㎜」と言ったりします。
参考:Nikon、APS-C?35㎜フルサイズ?35㎜換算とは。ニコン一眼レフカメラ知識。
前置きが長くなりましたが、まずは一気に超広角12㎜から超望遠450㎜まで見てみたいと思います。括弧の中は「APS-C機だとその見え方になるには焦点距離何㎜か」を表しています。
焦点距離12〜450㎜まで
焦点距離約12㎜(APS-Cだと8㎜)
焦点距離約15㎜(APS-Cだと10㎜)
焦点距離約24㎜(APS-Cだと16㎜)
焦点距離約28㎜(APS-Cだと18㎜)
焦点距離約35㎜(APS-Cだと23㎜)
焦点距離約50㎜(APS-Cだと33㎜)
焦点距離約75㎜(APS-Cだと50㎜)
焦点距離約90㎜(APS-Cだと60㎜)
焦点距離約105㎜(APS-Cだと70㎜)
焦点距離約135㎜(APS-Cだと90㎜)
焦点距離約200㎜(APS-Cだと133㎜)
焦点距離約300㎜(APS-Cだと200㎜)
焦点距離約450㎜(APS-Cだと300㎜)
という感じで、超広角から超望遠まで画角が変化しています。
では、それぞれの焦点距離はどのような特徴があり何を撮影するのに向いているのでしょうか?
あなたに適した焦点距離は?
ここで書かれていることは一つの参考程度にお考え頂ければ幸いです。
超広角域
おおよそ焦点距離24㎜(APS-Cだと16㎜)までが超広角域と言われます。
上の写真ではこれらの画像です。
焦点距離約12㎜(APS-Cだと8㎜)
焦点距離約15㎜(APS-Cだと10㎜)
焦点距離約24㎜(APS-Cだと16㎜)
画角が広いです。広い範囲を写すことができます。
そして、被写体はぐっと遠くにあるように感じられます。
これは超広角レンズの特徴であるパースペクティブ(遠近感のこと、パースと略されます)が働くためです。
パースペクティブが効くと手前のものはより大きく写り、遠くのものはより小さく写ります。また、被写体は中央に傾くように歪みます。
超広角域ともなるとそのパースペクティブは強烈ですね。
この焦点域は画角の広さと強いパースペクティブを活かして主に風景の撮影に向いています。広大な風景を写真に収めることができます。
また、室内なんかでも空間をより広く見せることができます。
そして、ボケが得難いので画面全体にピントのあった写真が撮影しやすいです(パンフォーカス)。
ちなみに、焦点距離約12㎜と焦点距離24㎜を見比べていただくと、パースのつき方が穏やかになっているかと思います。その分、傾くような歪みも少なくなります。
なので、焦点距離24㎜くらいであれば人物の撮影にも結構使えます。不自然な歪みは少ないです。人物を手前側に大きく写し、そして背景を小さく写せば広がりを表現でき印象的な写真になるのではないでしょうか。
難点は写真に写る範囲が広いために、余計なものが写り込みやすいということです。使う場所を選びますね。
フルサイズ用レンズだと「焦点距離14-24㎜」や「焦点距離16-35㎜」などが超広角ズームレンズとして用意されています。APS-C用レンズだと「焦点距離8-16㎜(35㎜換算約12-24㎜)」や「焦点距離10-24㎜(35㎜換算約15-36㎜)」などのレンズがあります。
SIGMA 超広角ズームレンズ 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM ニコン用 APS-C専用 203559
参考:おすすめ超広角ズームレンズ。Nikon(ニコン)、SIGMA(シグマ)、TAMRON(タムロン)の広角ズームレンズ。
APS-C機は焦点距離が約1.5倍されるので、広角は苦手です。でも、私は超広角が好きです。
下はそれぞれ焦点距離約12㎜(APS-Cだと8㎜)で撮影です。
雄大な風景を広く撮影したいなら超広角域が良いかもしれません。
広角域
おおよそ焦点距離35㎜(APS-Cだと23㎜)までが広角域とされます。
上の写真でいうとこれらの画像です。
焦点距離約28㎜(APS-Cだと18㎜)
焦点距離約35㎜(APS-Cだと23㎜)
広角ですが超広角と比べると遠近感はおとなしいです。なので、見た目も比較的自然な写真が撮影でき使いやすい画角でもあります。
特に焦点距離28㎜は広すぎず狭すぎない画角なので、日常の風景を上手くまとめて撮影することができると言われています。なので、スナップ写真なんかに向いています。標準域よりはパースが効くために臨場感のあるスナップ写真が撮れますね。ちなみに、リコーGRも28㎜です。
私はあまりスナップ写真を撮らないので参考に出来る写真が中々ありませんが、これが焦点距離約28㎜(APS-Cだと18㎜)です。
超広角のような激しいパースではないですが、ほど良くパースが効きます。
下は焦点距離約35㎜(APS-Cだと23㎜)です。ぎりぎり広角域です。
広角ですが自然な感じで見やすいかと思います。
35㎜もかなり万能感のある画角です。何を撮っても納まりが良いです。
ちなみに、標準ズームレンズの広角側がこれくらいの画角になります。例えば、APS-C用レンズで「焦点距離18-55㎜(35㎜換算約28-83㎜)」のレンズだと焦点距離18-23mm(35㎜換算約28-35㎜)くらいが広角に当たります。
広角域はスナップ写真や風景写真など幅広く使える焦点距離ですね。
標準域
おおよそ焦点距離50㎜(APS-Cだと33㎜)くらいまでが標準域とされます。肉眼の見え方と近いため標準と言われています。
上の写真でいうとこれです。
焦点距離約50㎜(APS-Cだと33㎜)
これも自然でバランスの良い印象です。
広角よりも被写体を「切り取る」という感覚があります。その分余計なものをカットして画面の整理をしやすいです。また、広角と違い背景をボカすことも比較的容易です。
なので、ポートレートやスナップ写真に多用されます。
私はポートレートなど大層なものは撮影しないのですが、下は焦点距離約40㎜(APS-Cだと27㎜)で標準域です。
広角よりも画面の整理をしやすいですが、中望遠や望遠ほど画角は狭くないので、周りの様子も程よく写せます。
なので、どのようなシーンで撮影しているのか、その場の雰囲気も写真にうまく表現させやすいです。
ただ、使いやすい焦点距離である一方で、見た印象は普通です。超広角や超望遠のような個性がないので、工夫して撮影する必要があります。
Nikon 標準ズームレンズ AF-S DX NIKKOR 16-85mm f/3.5-5.6G ED VR ニコンDXフォーマット専用
標準ズームレンズは広角から標準、さらに中望遠域までカバーしているので使用頻度は高いです。
参考:おすすめ標準ズームレンズ。Nikon(ニコン)、SIGMA(シグマ)、TAMRON(タムロン)の標準ズームレンズ。
また、標準域には価格の安い単焦点レンズもあります。
Nikon 単焦点レンズ AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G ニコンDXフォーマット専用
これは焦点距離35㎜ですがAPS-C機で使用すると焦点距離約50㎜になります。
標準域はポートレートやスナップ写真などに向いていますね。
中望遠域
おおよそ焦点距離105㎜(APS-Cだと70㎜)くらいまでが中望遠域と言われます。
上の写真でいうとこれらの画像です。
焦点距離約75㎜(APS-Cだと50㎜)
焦点距離約90㎜(APS-Cだと60㎜)
焦点距離約105㎜(APS-Cだと70㎜)
標準域よりも「切り取る」という印象がさらに強くなります。また、遠近感が弱まり(圧縮効果)、背景や前景をボカしやすいです。
なので、中望遠域はポートレートに最適です。見つめている時の感覚に近いとも言われています。あとは、花なども中望遠域で撮影しやすいと思います。
上の写真の通り焦点距離が長くなると画角が狭くなっていますね。
これがおおよそ焦点距離約60㎜(APS-Cだと40㎜)です。
下はおおよそ焦点距離約75㎜(APS-Cだと50㎜)です。
背景を簡単にボカせます。人が浮き立つようですね。また、対象を切り取ることで画面も良く整理できます。
ちなみに、標準ズームレンズだと望遠側がおおよそ中望遠域になります。
使い勝手の良い単焦点レンズもあります。
Nikon 単焦点レンズ AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G フルサイズ対応 AF-S 50/1.8G
焦点距離50mmですが、APS-C機で使用すると焦点距離約75㎜になります。人物を撮影する機会が多いなら大いに役に立ちそうです。
中望遠域は特にポートレートなどに向いています。
Nikon 単焦点レンズ AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G フルサイズ対応
望遠・超望遠域
おおよそ焦点距離200㎜(APS-Cだと133㎜)くらいまでが望遠域、そしてそれ以上が超望遠域と言われます。
上の写真でいうとこれらの画像です。
焦点距離約135㎜(APS-Cだと90㎜)
焦点距離約200㎜(APS-Cだと133㎜)
以下、超望遠です。
焦点距離約300㎜(APS-Cだと200㎜)
焦点距離約450㎜(APS-Cだと300㎜)
ここまでくると風景の一部だけを写すといった感覚ですね。
また、背景や前景を大きくボカすことができるし、圧縮効果で迫力のある写真も撮影できます。面白い写真が撮影できます。
もちろん、遠くのものを大きく写せるので近づけないものでも撮影できますね。
例えば下は焦点距離約260㎜(APS-Cだと175㎜)です。
圧縮効果で前後の遠近感が弱くなります。
また、写る範囲がかなり狭いので、ごちゃごちゃした場所でも余計なものを写さないで撮影することもできます。
ただのカモメですが、これはわざと離れたところから焦点距離200㎜(APS-Cだと133㎜)くらいでズームしています。近寄って広角でも撮影出来ましたが、それでは周りの観光客が写っていしまいます。
圧縮効果と風景を切り取る効果で花畑も撮影しやすいです。
画面一杯を花にできます。広角ではこのような撮影はできません。
そして、望遠レンズはスナイパーのように遠くのものを狙えるので撮影していて楽しいです。
下はそれぞれ焦点距離300㎜(APS-Cだと200㎜)です。
これは焦点距離約450㎜(APS-Cだと300㎜)です。
ぐっと寄れます。
焦点距離が長いとボケも大きくなります。
これは焦点距離約400㎜(APS-Cだと270㎜)です。前後が大きくボケます。
望遠ズームレンズはうまく使えば多彩な表現が可能です。
参考:望遠レンズの使い方のコツ。望遠レンズの4つの特性を知って良い写真を撮ろう。
Nikon 望遠ズームレンズ AF-S VR Zoom Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED フルサイズ対応
参考:おすすめ望遠ズームレンズ。Nikon(ニコン)、SIGMA(シグマ)、TAMRON(タムロン)の望遠ズームレンズ。
望遠・超望遠域も使って楽しい画角ですね。
まとめ
被写体には適材適所のレンズがあります。もちろん、必ずそのレンズが必要という訳ではありませんけどね。
また、焦点距離を変えるだけで同じ被写体でも違った表現が可能です。
よろしければご参考にしてください。
こんにちは
レンズも色々使ってみて、自分が撮りたい被写体に合ったものが
段々、使用頻度の高いレンズになるようです。
(資金的問題もありますが)
私の場合
当初、18-55mm 55-250mmのキットレンズを使っていましたが
全く自分の意図した写真は撮れませんでした。
写真は止めようと思い始めていたときに、ふんわりとボケた花の写真を見て
自分も撮ってみたいと思ったのがきっかけで、多様なレンズを知ることと
なりました。(そしてこちらのHPにもお世話になりました。)
広角も単焦点もマクロも知らず、キットレンズしか知らずにカメラから
遠ざかる人って結構いるように思います。
それにしても、一眼レフカメラの敷居は高いですね。
その要因は、メーカー毎のマウントの多さと、機能の名称がバラバラ
ということかなと、考えています。
車で有れば、どこのメーカーの車でもすぐに運転できます。
ハンドルはハンドル、アクセルはアクセル、ブレーキはブレーキです。
こっちの車のハンドルは右に回すと右に曲がるけど、こっちの車は
右に回すと左に曲がるなんてことはありません。レンズを本体マウントに
取り付けるときにNikonは左、CANONは右なんて他の業界では
あまりないことだと思います。
マウントが各社同じであるならば、どれだけ利用者の利益になり
業界もJAPANブランドで発展したように思われます。
(顧客の囲い込みなんて事ばかり考えているから、公共の利益にならず
将来の展望は?携帯電話も然りですが、国が主導してSIMフリーとなる)
と、何となく思う初心者です。
ちなみに、各社のマウントサイズとフランジバックをまとめてみました。
mickeyさん
コメントありがとうございます。
キットレンズしか知らないでカメラから遠ざかるとは多そうですね。そして、当ブログをお役に立てて頂けたようで、ありがとうございます。
本当にそう思いますよね。全てまとめてくれたらユーザーの利益は計り知れないですね。CanonとNikonは双方意識し過ぎなんですかね。
各社のマウントサイズとフランジバックのまとめありがとうございます。すごい・・・。
本当にマウントまとめて欲しいですね:)
初めまして
3383jijiと言います。
いぜんより、そちらのブログにお邪魔してます。
もう定年を迎えたものですけど
大昔、filmを少々やっておりました。
数年前から、デジいちをやり始め
右往左往しています。
焦点距離の話、参考になりました。
なかなか、自分なりの感覚掴めませんが
写真を撮ることは楽しんでます。
定年後のライフワークとしては最高のアイテムではないでしょうか。
また、コメでお邪魔したいと思います。
3383jijiさん
初めまして、コメントありがとうございます。
当ブログを拝見していただきありがとうございます:)
filmをやっておられたのですね。filmは憧れです。
おっしゃる通り、カメラは生活に彩りを加える最高のアイテムだと思います:)様々な場所へ出かけられるし、仲間も増えます。何よりも楽しいです。
これからもコツコツブログを書いていきたいと思いますので、ぜひ宜しくお願いします:)
私の認識がおかしかったら削除してください。
APS-Cの場合の焦点距離の換算がおかしいような気がします。
確かに、約1.5倍になりますので、APS-C機で使用すると
フルサイズ機での焦点距離よりも“望遠効果”が得られることになるはずです。
フルサイズで300ミリのレンズをAPS-C機で使用した場合は、
450mm相当(フルサイズ換算)と、なるのではないでしょうか?
お写真のキャプションを拝見すると、
APS-Cの場合の数字が小さくなっていますので、
“広角”で撮れるように思えるのですが・・・。
まーめ。さん
コメントありがとうございます:)
確かにそのように見えますね・・・。分かりにくくてすいません:)
焦点距離約450㎜(APS-Cだと300㎜)というキャプションの意味は、焦点距離300㎜のレンズをAPS-C機で使用すると、35㎜換算450㎜相当になるという意味です。
カッコ内はAPS-C機で考え場合の焦点距離となります。約1.5倍する前の数字ということになります。