カメラを趣味にしていると一度は耳にする「収差」と言う言葉。
価格コムのレンズクチコミなんかを読むと、詳しそうな方が「収差が・・・」と語っています。
なんだ収差って。特に知らなくても良いことですが、気になったので調べてまとめたいと思います。
目次
収差とは?収差の系統をみる
収差とは
本来ならばレンズを通った光がセンサーに像を作るとき、被写体と像とが完全に一致するのが理想です(大きさ変わりますが)。
ただ、実際は被写体と像は完全には一致しません。光学設計上どうしてもズレが生じてしまいます。このズレが「収差」となります。例えば、変に歪んでしまったり。
歪みも収差です。
それで収差はその原因により、大きく2つに分けられます。
収差は2つに分けられる
まず1つが「色収差」です。
光はRGB(レッド、グリーン、ブルー)の3色で出来ています。光の3原色ですね。さらに、色は光の波長で決まります。赤は波長が長く、青は波長が短く、緑は中間くらいです。
そして、光の波長の長さにより屈折率が異なります。なので、光がレンズを通り屈折すると、色により分散してしまう現象がおきます。
このような感じですね。3色で束になっていたのが、色ごとにばらけています。なので、色ズレや色の滲みが生じます。
これが色収差です。光の色の屈折率の違い、ざっくりいうと光の色が原因というわけ。だから色収差。
ちなみにレンズには色収差を抑える技術が色々と詰まっています。まずはレンズの素材です。
- 異常分散ガラス・・・異常分散ガラスは色の屈折率が通常の逆になっています。通常のガラスと組み合わせることで色の分散を打ち消し合い、色収差を補正します。
- 蛍石(ほたるいし)・・・上の異常分散ガラスの強力バージョン。またガラスより軽いのでレンズの軽量化に貢献します。
- 特殊底分散ガラス・・・屈折率の差が小さい。なので色収差も小さくなります。
たまに耳にする単語ですね。あとは凸レンズと凹レンズを組み合わせることや、ニコンのフレネルレンズ(PFレンズ)なども色収差の補正に貢献します。
次に「単色収差」です。これは色が原因ではありません。なので、同じ光の色(単色)でも起こります。なので、単色収差です。
じゃ、何が原因かというとレンズの形状です。
レンズは球面なので、光の入射位置により屈折する角度が異なってしまいます。これが焦点のズレを引き起こし、収差の原因となります。
このような感じですね。光が1点に集まるのが理想ですが、ズレてしまっています。なので、ピントが甘くなったりする。
ちなみに、「非球面レンズで収差を極限までなくし・・・」みたいなレンズ紹介の文言がありますよね。レンズが球面であることが収差の原因なので、非球面にしてそれを無くそうというわけです。
このような感じです。
非球面レンズを何枚も使われていたら、すごいレンズな気がしますよね。
さらに収差は分類される
大きく2つに分けられた収差ですが、その発生の仕方によりさらに分類されます。
このような感じ。なんで、こうカクカクした漢字ばかりなんですかね・・・難しいそうですが簡単です。
ちなみに、単色収差の5つを発見者の名前にちなんで、「ザイデルの5収差」と言います。
ちょっとそれぞれ細くみてみましょう。まずは色収差から。
色収差
軸上色収差は「画面中心部で生じる色の滲み」
軸上色収差は「画面中心部で生じる色の滲み」です。
「軸上」というのは「画面中心」という意味合いでおおよそ良いみたい。多くの収差は画面周辺部で発生しますが、軸上色収差はレンズの中心付近でも発生します。
先ほども載せましたが、イメージはこのような感じです。色がばらけるので色滲みとして写真に現れます。
特に紫系統の色滲みになりやすいです。いわゆるパープルフリンジも軸上色収差であることが多いです。
これがパープルフリンジですね。
軸上色収差は絞れば解消します。また、Lrなどでも除去は可能です。
倍率色収差は「画面周辺部で生じる色ずれ」
倍率色収差は「画面周辺部で生じる色ずれ」です。
イメージはこのような感じ。斜めからの光で起こりやすい。
いわゆる「色ズレ」はこれであることが多いです。
安価なレンズで色ズレは起こりやすい。
高価なレンズほど蛍石や特殊底分散ガラスなどの良い素材が使われており、色ズレは起こりにくいです。
これは絞っても解消しません。
次に、単色収差についてです。
単色収差(ザイデルの5収差)
球面収差は「レンズの中心で焦点が合わない収差」
球面収差は「レンズの中心で焦点が合わない収差」です。
光の通るレンズの位置により屈折する角度が違うからですね。焦点が1点に集まればカリカリに解像している状態ですが、収差の影響により焦点が1点に集まらないので、どうしてもピントが甘くなります。
ちなみに、多くの収差は画面周辺部で発生しますが、球面収差はレンズの中心付近でも発生します。収差の中でも大きなもので、いわゆる甘い解像感のない写真になります。
ただし、絞ることで解消します。
非点収差は「画面周辺部で焦点が合わない収差」
非点収差は「画面周辺部で焦点が合わない収差」です。
画面中心部で焦点が合わないのが上の球面収差でしたが、これは球面収差の画面周辺部バージョンです。
そして、非点収差の特徴は画面周辺部で点が楕円形に歪むこと。具体的には、星を撮影したときに鳥が羽を広げた感じになるのが非点収差です。
星撮りにはお馴染みの収差ですね。
これも絞れば解消します。
コマ収差は「画面周辺部で彗星(comet)のような尾を引く収差」
コマ収差は「画面周辺部で彗星(comet)のような尾を引く収差」です。
コマ収差は斜めから入社した光が外側に流れるように収束します。
このような感じです。
先ほどの非点収差はそもそも焦点が合わない収差ですが、コマ収差は焦点は結ぶものの、一点ではなくズレて結んでしまいます。
なので、像は外側に流れるようになります。星撮りでもコマ収差は厄介な存在です。また、星でなくても画面周辺部の画質の良し悪しを左右する収差でもあります。
明るいレンズなどで周辺部が流れるのはこれです。
これも絞れば解消します。
歪曲収差は「歪み」
これはいわゆる歪みです。ディストレーションとも言います。
樽型と糸巻き型が存在します。
ズームレンズなどでは、広角側では樽型に歪むことが多く、望遠側で糸巻き型に歪むことが多いです。
これは絞っても解消しません。なので、レタッチで取り除きます。
像面歪曲は「センサー上に像が集まらない収差」
像面歪曲は「センサー上に像が集まらない収差」です。
これは像がセンサー上に結像せずに歪曲してしまいます。なので、周辺部でボヤけた感じになる。
このような感じですね。
画面中央でピントを合わせると周辺部のピントが合わず、周辺部でピントを合わせると周辺部で合いません。
ただし、これは絞ることで解消します。絞って被写界深度を深めると、分からなくなるというわけです。
以上が、単色収差(ザイデルの5収差)でした。細かな話ですが知っていると得した気分になりますね。
まとめ
収差は難しいですが、どれも普段目にしているものばかりでした。
高いレンズはこれらを補正するために多くの素材や技術が投入されています。レンズが高価なわけです・・・。
” サ “イデルではなくて” ザ “イデルですよ。
ありがとうございます!
解説上手! わかりやすい!
ありがとうございます!