レンズを選ぶ際に目にすることの多い、「最大撮影倍率」と「最短撮影距離」という単語。
私は初心者の頃、「最大撮影倍率」と「最短撮影距離」についてイマイチ分かっていませんでした。
という事で、「最大撮影倍率」と「最短撮影距離」について分かりやすく解説したいと思います。
目次
最短撮影距離とは
まず先に、わかりやすい「最短撮影距離」について解説します。
ざっくりいうと、最短撮影距離とは「被写体に目一杯近づいた時の距離」です。これより近づいたらピントが合わなくなるギリギリの距離ですね。
最短撮影距離0.3mなら0.3mまで被写体に近づけることになります。これはメーカーHPなどでレンズの仕様を見ると必ず記載されています。
そして、細かな話ですが最短撮影距離はセンサーから被写体までの距離です。
レンズから被写体までの距離はワーキングディスタンスと呼ばれ、またちょっと別です。一応言うと当然ですが、ワーキングディスタンスは最短撮影距離よりも短いです。
ワーキングディスタンスは最短撮影距から、レンズの長さとフランジバッグ(センサーからレンズの一番後ろまでの距離)を引いた長さになります。
ちなみに、基本的に望遠レンズほど最短撮影距離は長くなり、広角レンズほど短くなります。例えば、Nikon 200-500mmF5.6という望遠レンズは最短撮影距離が2.2mもあります。一方で、Nikon 14-24mmF2.8という広角レンズは最短撮影距離が0.28mです。全然違いますね。
そして、最短撮影距離が短いレンズは、一般的に「寄れるレンズ」と言われます。つまり、広角レンズの方が寄れるということになりますね。
寄れるレンズは重宝されます。というのも、まず被写体にグッと近寄れるので迫力や臨場感を表現できます。
被写体に近づくと迫力が出る。
また、狭い場所では最短撮影距離が長いと大変使いにくいです。例えば、テーブルの上の料理を撮ろうと思っても、最短撮影距離が1mもあると一旦立ち上がって離れなければなりません。不便です。
ということで、寄れるレンズは重宝されるわけです。
あと、「寄れるということはそれだけ被写体に近づけるから大きく写せる」と思うかもしれませんが、ちょっとはそれは別です。そこに「最大撮影倍率」という単語が絡んできます。
最大撮影倍率とは
最大撮影倍率の色々な表記の仕方
最大撮影倍率が何かの説明の前に、その表記方法についてサラッと書きたいと思います。
基本的に最大撮影倍率は「1倍」とか「0.3倍」や「0.14倍」というように「○○倍」で表記されます。
ただし、「1/2倍」とか「1/4倍」のように分数で表記されることもあります。前者が0.5倍になり、後者が0.25倍です。さらに、「1:1」とか「1:5」みたい対比で表記されることもあります。これは前者が1倍、後者が0.2倍(1÷5)というようになります。
では、表記方法が分かったところでザックリ言うと、最大撮影倍率が大きい方が被写体を大きく写せます。つまり、最大撮影倍率0.5倍よりも1倍の方が、被写体を大きく写せるようになるわけです。
いきなりちょっと意味が分からないかもしれませんが、下で解説します。
最大撮影倍率と写真の見え方
最大撮影倍率1倍というのは、「センサーに被写体の大きさを1倍で写せること」を意味します。
このフクロウの置物。
上のような写真になっているということは、センサーにも下図のように写っていることになります(センサーはカメラの奥にあり、ここに像が写ることで写真になります)。
フクロウは高さ約10cmちょっと、それに対しセンサーは高さ約2.4cmなので、フクロウは本来の1/5以下の大きさでしか写っていません。
※実際には像は上下左右反対に写ります。
これを最大撮影倍率1倍で写すとこうなります。
「センサーに被写体の大きさを1倍で写す」とは、このようなことです。
これを写真にすると、被写体が大きく写った写真になります(センサー上の像が写真になります)。
このような具合ですね。最大撮影倍率1倍はかなり大きく写ります。
最大撮影倍率0.5倍なら被写体の大きさの半分、0.25倍なら被写体の大きさの1/4です。
センサーに対し、像の大きさが1/2倍、1/4倍で写ります。
このようにセンサーに写ったものを写真にするとこうなります。
このような感じですね。最大撮影倍率が小さくなるほど、被写体も小さく写ります。
結局、最大撮影倍率は「センサー上に写る像と実物との大きさの比率」を表していることになります。
この知識を踏まえると、先ほどのNikon 200-500mmF5.6(最短撮影距離2.2m)は、Nikon 14-24mmF2.8(最短撮影距離0.28m)と比べて全く寄れませんが、Nikon 14-24mmF2.8よりも被写体を大きく撮影すことはできます。
と言うのも、Nikon 200-500mmF5.6は最大撮影倍率0.22倍、Nikon 14-24mmF2.8は0.14倍だからです。
センサーサイズによって変わる
カメラによってセンサーの大きさが違います。フルサイズよりもAPS-Cの方が小さいです。さらにマイクロフォーサーズはもっと小さい。
この場合は、最大撮影倍率が1倍で同じでも、センサーが小さい方が写真は大きく写ります。
このような具合で、センサーが小さくても、出力される写真の大きさは同じなので、センサーが小さければ、それだけ写真が拡大されて見えます。
なので、APS-Cはフルサイズよりも約1.5倍拡大されて写る、マイクロフォーサーズならフルサイズよりも約2倍大きく写ることになります(カメラのカタログ等には35mm換算された倍率が書かれていることも多い)。
最大撮影倍率が大きいのはマクロレンズ
一般的に最大撮影倍率は普通のズームレンズで0.2〜0.3倍程度しかありません。大きな最大撮影倍率が欲しいのならマクロレンズです。
マクロレンズなら基本は最大撮影倍率1倍です(等倍マクロという)。ただし、0.5倍(ハーフマクロという)のもあるので確認が必要です。
ちなみに、同じ等倍マクロレンズでも、60mmマクロとか200mmマクロなど焦点距離の違いがあります。
基本的に60mmマクロの方が200mmマクロよりも最短撮影距離が短いので寄れます。
一方で、200mmマクロの方が60mmマクロよりも、最短撮影距離が長いので、離れた場所から被写体を等倍に大きく写せます。動物とか虫など近寄れないものはこっちの方が便利。また、画角(写る範囲)も狭いので画面整理が容易という利点もあります。
もし、マクロレンズを購入する際は自分の用途にあった焦点距離のものを購入しましょう。個人的には90mmや105mmなどの中望遠マクロレンズをオススメします。
まとめ
- 最短撮影距離は近寄れる距離
- 最短撮影距離は短い方が寄れるレンズ
- 最大撮影倍率は写せる大きさ
- 最大撮影倍率が大き方が大きく写せるレンズ
- 最大撮影倍率が特に大きいのはマクロレンズ
いつも拝読させていただき、お礼申し上げます。
老婆心ながら、文中にカメラのセンサーにフクロウの置物が写る
画像がありますが、出来うるなら上下左右反対の画像と
した方が、センサーに写る画像に誤解が生じないような気がします。
mickeyさん
「上下左右反対の画像」というのは確かにそうですね。完全に見落としていました。
ここではセンサーと像の対比についてイメージが掴めれば良いなと思っているので、このままでいきたいと思います(画像作り直しは大変なので)。
注意書きをさせていただきたいと思います。