写真撮影をしていると気になるのがノイズ。
ざらざらしたり、カラフルな点々が写ったりと、せっかくの写真もイマイチな感じになってしまいます。
ただし、ノイズの原因を知り対策をすれば、ある程度は綺麗にすることはできます。
ということで、今回はノイズの原因と対策について書きたいと思います。
ノイズの種類
この記事ではノイズについて3種類を考えてみます。
それが以下です。
- 高感度ノイズ
- 長時間ノイズ
- 画像劣化によるノイズ
画像劣化によるノイズだけ他とちょっと性質が異なりますが一緒に考えてみます。
では、それぞれ詳しく。
高感度ノイズ
高感度ノイズとは
高感度ノイズとはISO感度を高くした時に発生するノイズです。
ISO感度を高くすると僅かな光でも明るく写すことが可能になるのですが、それはセンサーで受けた光の情報を増幅させているからです。とても便利なのですが、その副作用として不要なノイズまでもが増幅され目立つようになってしまいます。これが高感度ノイズとして写真に現れる訳です(ざっくりとした説明ですが)。
あれこれ撮影をしているとISO感度を上げる場面も多いと思うので、高感度ノイズはポピュラー!?なノイズだと思います。
ただし、一口に高感度ノイズと言っても、これは更に2つのノイズに分けることができます。それが輝度ノイズとカラーノイズです。
まず、輝度ノイズはざらつきとして発生します。
これが輝度ノイズです。ざらざらとして質感も悪いですし繊細感も失われてしまいます。
次にカラーノイズですが、これは赤・青・緑などのピクセルが発生します。ちなみに、カラーノイズは色ノイズとか偽色と呼ばれることもあります。
これがカラーノイズ。現実にはこんな色はないのですが、何故か赤・青・緑などの点々が発生します。
そして、ISO感度を高くすると輝度ノイズとカラーノイズが組み合わさって発生します。
これがいわゆる高感度ノイズです。高感度ノイズは輝度ノイズとカラーノイズの2つを含んでいることになりますね。
では、高感度ノイズの対策について考えてみたと思います。
高感度ノイズの対策
ISO感度を上げない
まずは出来るだけISO感度を上げないことです。高感度ノイズの原因を断つということですね。
ISO感度はシャッタースピードを速めたい時に使うことが多いですが、可能なら絞りを開いて対応してみると良いでしょう。
また、手ブレ防止ならISO感度を上げるのではなく三脚を使って対応すると良いと思います。
とは言っても、それでもISO感度を上げざるを得ない場合もありますね。その場合は以下の対策があります。
現像ソフト(Lightroomなど)でノイズ低減処理をする
現像ソフトも年々進化しているので、これでノイズ低減処理をすれば簡単に綺麗にすることができます。
私はAdobeのLightroomを使用しているので実際に試してみたいと思います。
ノイズ低減の部分に「輝度」と「カラー」というスライダーがあり、これでそれぞれ輝度ノイズとカラーノイズを取り除くことができます。
今回は「輝度」を「65」、「カラー」を「25」と強めに調整。
こんな感じで簡単に高感度ノイズが綺麗になります。
左が高感度ノイズ除去前、右が除去後です。全然違いますね。改めてLightroomのノイズ低減の凄さを実感しました。
しかし、ノイズ低減処理も万能ではなく副作用があります。
それはノイズ低減を強くし過ぎると絵の具で塗ったかようにのっぺりとしてしまうことです。
上はノイズ低減処理を強くした画像ですが、ディテールが潰れてしまって油絵のようになっています。
ISO100で撮影した画像(ノイズ低減なし)とノイズ低減を強くし過ぎた画像を比べてみます。
ノイズ低減を強くした方(右)はぺっとりとしていますね。ディテールが潰れています。緩い感じもします。
このように現像ソフトで処理するにも限界があります。なので、やはり撮影段階で高感度ノイズが多くなり過ぎないようにするというのはとても大切です。
また、Lightroom以外にもPhotoshopやNikなどでもノイズ低減は出来ますし、やり方や効果も様々なので色々と試してみると良いかもしれませんね。
ちなみに、カメラ側にも高感度ノイズ低減機能(ノイズリダクション)というものがあります(名称はメーカーにより違いがあります)。
これはJpeg撮って出しをする場合にはノイズを取り除けますが、RAWで撮影する場合には関係ない機能となります。
また、カメラ側の高感度ノイズ低減機能(ノイズリダクション)には弱め・標準・強めという設定がありますが(ニコンだと)、強くし過ぎるとJpeg撮って出しでもディテールが損なわれることがあります。
加算平均合成
どうしても三脚を立てられず手ブレ防止のためにISO感度を高くする必要がある場面も時々ありますね。
そんな時は手持ちで連写し同じ構図の写真を複数枚撮影しておくと、「加算平均合成」という方法で高感度ノイズを取り除くことができます(動く被写体には使えませんが)。
高感度ノイズはランダムノイズで画像一枚一枚で発生する場所が異なります。なので、画像をものすごく細かく見ると、ある画像ではノイズが出ている部分も、他の画像ではノイズが出ていなかったりします。
ということは、複数枚の画像を使用しノイズが出ている部分とノイズのない部分を足して割っていくと(加算して平均していくと)全体のノイズの程度が抑えられていきますね。これは使用する画像の枚数が多い程、ノイズが少なくなっていきます。これが加算平均合成です、ざっくりとした説明ですが・・・。
加算平均合成にはPsなどのソフトが必要だったり少し処理が面倒だったりもしますが、ノイズ低減処理のようにディテールが損なわれることなくノイズのみを綺麗に取り除くことができます。
左がISO6400で撮影した画像の等倍です。高感度ノイズでざらざら。右が加算平均合成でノイズ除去した画像です。Lightroomでノイズ低減処理をしなくてもここまで綺麗になります。油絵のようにもなりません。すごい効果。
詳しい方法については過去記事があるのでご参照くださいませ。星景写真用に書いた記事ですが色々と応用できます。
参照:加算平均でノイズを除去して綺麗な星景写真!加算平均の方法と有効な使い方とは!?
その他
その他としてセンサーの大きなカメラを使うという手もあります。
基本的にはセンサーが大きい方が高感度ノイズには強いです。なので、APS-C機よりもフルサイズ機の方が高感度ノイズは出にくいことになります。
ということは、主に室内でスポーツを撮影したいとかならフルサイズ機を使うのが良いでしょうね。
ただし、最近ではAPS-C機のセンサーもかなり優秀になってきているので、フルサイズ機と比べて必ずしも大きな差があるとは言い難いという意見もあります。
高感度ノイズについての個人的まとめ
やはり高感度ノイズは撮影段階で極力抑えるのが基本です。
ただし、ある程度までなら現像処理で綺麗にすることができるので、被写体ブレや手ブレしそうなら積極的にISO感度を上げていくと良いと思います。
また、加算平均合成も使い方によってはかなり便利だと思うので、うまく撮影に取り入れていきたいです。星景写真だとかなり使えます。
次に、長時間ノイズについて。
長時間(長秒)ノイズ
長時間(長秒)ノイズとは
長時間ノイズとはシャッター速度を長くした時に発生するノイズです。
シャッター速度を長くするとセンサー等が熱を持つようになりますが、熱を持ち過ぎた際にセンサーが暴走し本来は存在しないはずの場所に電気信号を生じてしまうことがあります。これがノイズを発生させます。なので、長時間ノイズは熱ノイズと呼ばれたりもします。
具体的に見てみるとこれです。
明るいカラフルな点々ができていますね。これが長時間ノイズです。星みたいですね。
熱ノイズと呼ばれるだけあって、外気温によっても発生の仕方が変わってきます。真冬で氷点下15度とか20度とかだとシャッター速度を2,3分にしてもほとんど長時間ノイズは発生しませんが、一方で真夏だと1分足らずのシャッター速度でも大量の長時間ノイズが発生したりもします。
では、長時間ノイズの対策についてみてみましょう。
長時間ノイズの対策
長秒時ノイズ低減をオンにする
もっともシンプルな方法はカメラの長秒時ノイズ低減をオンにすることです。
実は長時間ノイズは高感度ノイズのように現像で簡単に取り除けないという特徴があります。結構厄介なノイズ。そこで撮影段階で取り除いてしまうわけです。
これで長時間ノイズはすっかり綺麗に除去できます。また、長秒時ノイズ低減は高感度ノイズ低減とは違い、ちゃんとRAWでも効果があります。ディテールが損なわれるみたいなこともありません。
ただし、長秒時ノイズ低減をオンにすると撮影後にシャッター速度と同じ時間だけカメラが使えなくなってしまいます。例えば、シャッター速度120秒で撮影すると、撮影終了直後から更に120秒間カメラが使えなくなります。なので、1枚撮影するのに2倍の時間を要することになります。処理時間が長い・・・。
これはちょっと不便ですよね。待てば良いだけなのですが、何枚も撮影するとなると非効率ですし、これが原因でシャッターチャンスを逃すこともあるかもしれませんね。
ダーク減算する
ダーク減算という方法もあります。
これはちょっとマニアックですが、長時間ノイズの特性を利用した手法です。
その特性とは、長時間ノイズは同じISO感度・同じシャッター速度・同じ気温であれば画像の同じ場所に発生するということです。ゆえに長時間ノイズは固定ノイズです(高感度ノイズがランダムノイズだったので逆ですね)。
では、ざっくりダーク減算の原理を見てみたいと思います。
まず、シャッター速度を長くして撮影したサンプル画像があるとします。今回は適当にISO800、SS120秒で撮影したと仮定します。
上の点々が長時間ノイズだとお考えください。
次に、ダークフレームと呼ばれる画像を用意します。ダークフレームとは上のサンプル画像と同じISO感度、同じシャッター速度、同じ温度で撮影した真っ黒な画像のことです。
なので、上のサンプル画像のダークフレームを用意するために、撮影したその場でレンズキャップをしISO800、SS120秒で真っ黒な画像を撮影します(撮影したその場でというのは同じ温度にするためですね)。
これがダークフレームです。
注目すべきはサンプル画像とダークフレームでは同じ位置に長時間ノイズが発生することです。
このようになるのは長時間ノイズが固定ノイズだからですね。
あとはダークフレームを元にサンプル画像から長時間ノイズを引き算します。
これがダーク減算です。
カメラの長秒時ノイズ低減機能を使った場合は撮影の度にシャッター速度と同じだけ処理時間を要していましたが、これは撮影の度にダークフレームを自動で撮影しカメラ内でダーク減算をしているのと同じことになります。
一方で、カメラに頼らず自分で撮影後にダーク減算すれば、ダークフレームを1枚用意すれだけで良くなるので時間の節約になります。処理待ちしなくて良いので効率的。
なら常にダーク減算で処理すれば良いと思うかもしれませんがこれにも問題があります。というのも、ダーク減算するには専用ソフトが必要になります
無料のソフトだとStarStaXやSiriusCompなどでダーク減算可能です。Psでもそれっぽいことができます。
ただ、それぞれ使いにくい点があったり、精度的にいまいちだったりするらしい。ダーク減算はこのソフトの問題がネックになります。
長時間ノイズについての個人的まとめ
普通に撮影するだけなら長時間ノイズが発生するほどシャッターを長くすることはないと思います。
長時間ノイズが問題になるのは星景や夜景の撮影だったり、濃いNDフィルターを使った長時間撮影です。
特に、星景写真で地上景を別撮りなどをするようになると長時間ノイズに悩まされます。その場合はダーク減算できる良いソフトをゲットするのが良いのかなと考えています。
去年、私は星景写真でカメラの長秒時ノイズ低減機能を使用していましたが、処理待ちの時間が長くてうんざりしていました。今年はどうにかしたいです。
次は、画像劣化によるノイズについて。
画像劣化によるノイズ
画像劣化によるノイズとは
そのままですが、画像劣化とはRAW現像する時にあれこれ無理にいじり過ぎて画像が荒れることです。そして、画像荒れがノイズとして発生することがあります。
特に、暗部を無理に明るくするとノイズが出やすいです。
上の写真は露出アンダーの画像を明るく現像したものです。
一見良さそうですが一部を拡大するとノイズが乗っていることが分かります。
こんな感じでザラザラしています。色が紫っぽいく変色することもあります。
では、対策はどうしたら良いのでしょか!?
画像劣化の対策:劣化に強いRAW画像を撮影する
無理なRAW現像をしないというのは前提ですが、劣化に強いRAW画像を撮影するというのも重要です。ノイズは露光不足した部分に発生しやすいので出来るだけ黒つぶれを避けた方が良いです。
特に、黒つぶれは明暗差のある場面でなりやすいので、それにうまく対処する必要がありますね。そのためにはハーフNDフィルターを使用する、HDRや露出ブレンドを用いるなどの方法があります。
参考:ハーフNDフィルターの必要性・種類・選び方!どれが1枚目におすすめか!?
また、基本的にセンサーが大きいカメラの方が劣化に強いRAW画像を得られる傾向にありますね。あとは、ISO感度も上げずに基準感度(多くの場合はISO100)で撮影するのも効果があります。
この辺りについては過去記事でまとめてありますので、よろしければ参考にしてくださいませ。カメラのダイナミックレンジについて書いた記事ですが、黒つぶれ対策についても触れています。
参考:ダイナミックレンジとは!?ダイナミックレンジを最大に活用して上手く撮影!
まとめ
以上、写真のノイズについてでした!
個人的には特に星景でのノイズをできるだけ綺麗にしたいです!ノイズ処理は日本ではあまり知られていな海外の便利なアプリなどもあるようなので積極的に使っていきたいと思います:)
素晴らしいまとめ!
お疲れさまでした m(_ _)m
実をいうと、今度カメラのノイズに関してまとめて記事にしようと思っていましたが、全部言われてしまいました (笑)
※ちなみにハーフND買いましたので、今月から使ってみます♪
tatsumoさん
コメントありがとうございます!
どうせならと思い、全てまとめて書いてしまいました笑
ハーフNDおめでとうございます!着々とフィルター増えていますね:)
わかりやすくまとめてくださりありがとうございます。
ダーク減算処理について前々から不思議に思っていることがあります。もしご存知であれば教えてください。
サンプル画像とダークフレームでは、同じピクセルで同じ色の情報がなくなっていると思います。ダーク減算で2枚の画像を引き算する場合、情報のないピクセルはどこから色の情報を持ってくるのでしょうか?周りのピクセルの平均を取ったりするのでしょうか?
わかりにくい質問で申し訳ないです。もしご存知でしたらご教授お願いします。
Koさん
コメントありがとうございます!
ダーク減算のそれは私も疑問に思っていました。
たぶん単純に引いているだけなので、ピクセルの平均を取るみたいなことはないと思います。
確認した訳ではありませんが、単なる黒い穴みたいになっているかもしれませんね・・・。
ありがとうございます。
長時間ノイズが出るときというのは、たいてい暗い写真なので黒く色を抜いてしまった方が目立ちにくいのかもしれませんね。
貴重なご意見ありがとうございます。
Koさん
ご返信ありがとうございます!
その通りだと思います:)
目に付かなければそれで良いので。
ワイズさん、素晴らしい記事です! ありがとうございます。
石橋さん
コメントありがとうございます!
お役に立てて良かったです!
今後ともよろしくお願いします:)
ワイズさん、いつもお役立ち記事を書いて頂いて有難うございます!
感謝申し上げます。
私は、ほとんどの記事を1冊のファイルにして夫婦で活用させて頂いております。
ファイル名は「Wise Camera情報」です。
大変でしょうが、今後とも情報発信よろしくお願いいたします。
キッチョムさん
コメントありがとうございます!
そんなにお役に立てて光栄です!ブログの続けてよかったです:)
これからもよろしくお願いします!
高感度ノイズ対策っていろいろな手法があるのですね!
新型移行してから高感度が強くなって常用域だとノイズリダクションがディテールクラッシャーな不要な機能に思えてくるあたり現行機種の進化を感じました。
先日60秒オーバーな天体追尾に挑戦してみたのですが長時間ノイズが出ていたので撮る前にワイズカメラさんのこの記事を読みたかったです(苦笑)
ヤマヒロさん
コメントありがとうございます!
最新機はノイズリダクションは逆効果ですよね!
長秒ノイズは厄介ですよね。星を追尾できるペンタックスが羨ましいです:)