望遠レンズはとても使い勝手がいいです。
ご存知の通り、望遠レンズは被写体を拡大して撮影することができます。
しかし、もし望遠レンズのことを拡大して撮影するものとしか知らないのであれば、それはもったいないと思います。
なぜなら、望遠レンズにはいくつかの特性があり、これを知っていると表現の幅をぐっと広げることができるからです。
その望遠レンズの特性について順を追って書いてみたいと思います。
ズームできる
これは皆さんご存知の通りです。被写体を拡大できるということです。
望遠レンズは焦点距離を長くすることで、被写体を拡大して撮影することができます。
例えば、これは焦点距離18㎜です。何を写しているのかもわかりません。
これが50㎜です。
中央に小さなフクロウがいます。例えば、標準ズームレンズは焦点距離18㎜~50㎜前後というものが多いので、同じ場所からだとここまでしか拡大できません。
一方で望遠200㎜だとこうなります。
望遠レンズで焦点距離200㎜を使えば、同じ場所からでもズームして被写体を大きく撮影することができます。
あえて書くまでもありませんが、ズームできることが望遠レンズの1つ目の特性です。
近づけないものでも、遠くから風景の一部分を切り取って撮影することができます。
とても便利です。
では、近づけるものであれば脚を使って、被写体に寄れば同じことじゃない!?と思う方もいるかもしれません。
では、比べてみたいと思います。
焦点距離18㎜と200㎜で被写体の大きさが同じくらいになるように、撮影ポイントを変えてみます。
フクロウ写真A(焦点距離18㎜)。
フクロウ写真B(焦点距離200㎜)。
見比べてみると被写体の大きさは同じですが、写真全体の雰囲気が何か違います。
このようになるのは望遠レンズの他の特性があるからです。
画角が狭い
上のような結果になる理由の一つに、望遠レンズは画角が狭いということがあります。
では、画角が狭いことで写真全体にどのような変化が起こるのでしょうか??
この写真を比べてみます。1枚目が焦点距離18㎜、2枚目が焦点距離120㎜です。
見比べてみると被写体(レンズ)は同じ大きさですが、背景に写っている範囲が違います。
1枚目の写真では両端に「木」や「クローゼット」が写り込んでいますが、2枚目は「本棚」の一部しか写っていません。このように被写体が同じ大きさなのに、背景に違いがでるのは、広角に比べて望遠は画角が狭いためです。
そもそも画角の違いで、なぜ背景が変わるのか・・・。イマイチわかりにくいので、上写真の状況を図にしてみました。
被写体を同じ大きさで撮影しようとすると、広角では被写体により近く、望遠ではより遠いところからの撮影になります。赤線の間が写真に写る範囲だと思ってください。
そうすると、上図のように画角が広いと写真に写る範囲が広がっていきます。つまり、背景に多くのものが写り込むようになります。一方で、画角が狭いと写真に写る範囲はそれほど広がりません。つまり、背景に余計なものが写りません。
図で見るとわかりやすいですね。
ちなみに、焦点距離がより長い方が、つまり、より望遠である方が、画角はより狭くなります。
画角が狭いことのメリットとしては、背景のごちゃごちゃした余計なものを写さなくて済むことです。背景をすっきりシンプルにすることができます。
例えばこれです。
この写真は焦点距離230㎜の望遠を使って寄っています。脚を使っても近寄れる場面ですが、単純に広角で近寄るだけでは余計な木や道路が写り込んでしまいます。
これも、
ただのカモメですが、これもわざと離れたところから焦点距離200㎜くらいで寄っています。近寄って広角でも撮影出来ましたが、周りの観光客が写っていしまいます。
望遠は画角が狭くて背景を整理しやすい。これが望遠レンズの2つ目の特性です。
あえて被写体から離れて望遠で撮影するといい事があるかもしれませんね。
また、背景に写るものの大きさにより遠近感も異なります。これが望遠レンズの3つ目の特性です。
圧縮効果
望遠レンズの3つ目の特性に圧縮効果というものがあります。これにも画角が関わってきます。
画角が広いと写るものが小さくなります。一方で、画角が狭いと写るものは小さくなりません。
なぜなのか?
上図のように、画角が広いと、写り込んだ広い範囲を写真の中に納めることになります。なので、写っているものがギュッと小さくなります。一方で、画角が狭ければ、写真に納める範囲もそれほど広くなりません。なので、写っているものが小さくならずに済みます。
先ほどのレンズの写真です。1枚目が焦点距離18㎜、2枚目が焦点距離120㎜。
背景の本棚の大きさが全然違います。2枚目は背景が大きく写り込み遠近感がなくなったように見えます。これも図で見てみます。
画角が広いとそれを写真に納めるのに、背景のものがギュッと小さくなります。一方で、画角が狭いと、背景のものはギュッとならずに大きく写ります。
このように画角が狭い望遠で撮影すると、背景が大きく写り込み被写体との遠近感がなくなったように見えます。これを圧縮効果と呼びます。
焦点距離17㎜と焦点距離300㎜の差です。広角では写真に遠近感が生まれ、逆に望遠では圧縮効果によって遠近感がなくなります。望遠は遠くのものを手前に引っ張ってくる効果があります。
圧縮効果は色々使えます。
向こう側の街並みを大きく写すことで、グッと引っ張ってきたように見せ、建物の密度を高めることもできます。桜並木やイチョウ並木でも応用できます。
そして、これです。
望遠を使い遠くの背景を大きく写せば迫力も生まれます。これも圧縮効果のおかげです。
何となく撮影するのではなく、ある程度距離を保って、望遠を使えば圧縮効果で良い表現ができるかもしれません。
ボケ易い
望遠レンズで焦点距離を長くすれば、背景がボケ易い。これが望遠レンズの4つ目の特性です。
焦点距離18㎜。
焦点距離200㎜。
焦点距離300㎜。
同じF5.6で撮影しましたが、だんだん背景が大きくボケて、被写体が引き立つようになります。
望遠を使い焦点距離を長くすれば手前や背景がボケ易くなります。
暗いレンズでも望遠を使えば簡単にボカすことができます。
2枚ともF5.6で撮影です。このように、F値が小さくなくても、望遠を使い焦点距離を長くすればボケます。
これも望遠レンズの特性です。
おさらい
望遠レンズを上手く使うための4つの特性とは、
- ズームできる
- 画角が狭い
- 圧縮効果
- ボケ易い
です。
被写体との適切な距離を取って望遠で撮影すれば、ただ脚を使って近寄り撮影するだけの写真とは違った良い写真が撮れます。
その時、この4つの特性を覚えておけば役に立つはずです。
参考:望遠ズームレンズ。Nikon(ニコン)、SIGMA(シグマ)、TAMRON(タムロン)のおすすめ望遠ズームレンズ。
まとめ
望遠レンズは使い方によってはかなり幅広い表現をできそうです。
持っていて損のないレンズだと思います。
参考:望遠ズームレンズ。Nikon(ニコン)、SIGMA(シグマ)、TAMRON(タムロン)のおすすめ望遠ズームレンズ。
ミラーレスカメラの購入を検討中です。
標準レンズキットにするか、望遠レンズキットに するか迷っていました。
詳しく解りやすい記事を拝見し、望遠レンズについて理解できました!
望遠レンズキットを購入し、カメラライフを楽しみたいです。ありがとうございました(^-^)/
ケンタロウさん
コメントありがとうございます:)
参考にしていただいて何よりです!ありがとうございます!
どうぞカメラライフを楽しんでください:)
はじめまして。
当然同じ位置から撮影すれば焦点距離が長いほど被写体は大きく写りますが、普通「寄れる」とは被写体に近づけるという意味なので、望遠レンズは「寄れない」レンズです。
最大撮影倍率も(レンズに拠りますが)望遠系より広角系のほうが大きい場合が多いのではないでしょうか。
例えばキヤノンの場合、35mmF2ISの最短撮影距離は0.24m(その際の撮影倍率は0.24倍)、50mmF1.4は0.45m(0.15倍)、200mmF2.8Lは1.5m(0.16倍)です。
以上揚げ足取りですが日本語的に気になったもので・・・。
村家さん
コメントありがとうございます:)
確かに、私は「寄れる」を「ズーム」できるの意味で使っていましたが、日本語がおかしいですね!
訂正したいと思います:)
ありがとうございます:)
わかりやすい!
ありがとうございます!