写真を趣味にしていると、例えば「この写真は抜けが良い」なんて言葉、何度も耳にしたことはあるのではないでしょうか。
私も耳にするし使います。
しかし、どういう意味か具体的に説明してと言われれば、感覚的に使っている言葉なのでちょっと困ります。
写真にはこうした表現が幾つかありますが、一体どういう意味を表しているのでしょうか。
写真界のあやふやな言い回しについて
抜け
抜け(ぬけ)は「空の抜けが良い」とか「このレンズは抜けが良い」などとよく使われます。
Canonが運営している写真用語集(CANON IMAGE GATEWAY)によると、
抜けとは、はっきりとクリアに見え、鮮明に見える写真のこと。
参考:imagegateway
らしい。さらに、「標高の高い高原など空気が澄んでいる場所の方が、抜けのいい写真が撮れる」と補足されています。
それでいくと、この写真は抜けが良いと言ってもよいでしょう。
撮影時、空気は非常に澄んでクリアでした。
一方で、黄砂で淀んだ時に撮った写真は抜けが悪いと言えます。
霞んで磨りガラスを通して見ているかのようです。空気が死んでいます。
こうしてみると、比較的色味がはっきりしコントラストのある写真が抜けが良いと感じやすく、逆に色味が上手く出ずコントラスも悪い写真が抜けが悪いと感じやすいです。
つまり、抜けの良し悪しを決める要素としてコントラストが重要な役割を果たしているようです。抜けが良い写真を撮るには、空気の状態(気象状況)や光の向きがを考え、コントラストが高まるよう撮影する必要がありそう。
ただし、単純に「抜け=コントラスト」ではありません。例えば、ホワイトバラスを黄色っぽくし過ぎると、濁った印象になりクリア感に欠けます。これは抜けが悪く感じる。抜けはコントラストのみならずホワイトバランスなど複合的な要素の積み重ねで成り立っているようですね。あとは受け取る側の主観。
では、「抜けが良いレンズ」はどうなのか。単純に考えれば「はっきりとクリアに写るレンズ」ということになりますが、同じ風景でもレンズによって「抜けの具合」が違うのか疑問になります。
恐らくですが、まずレンズコーティングによって変わってくる部分もあるでしょう。例えば、ニコンなら非常に優秀な反射防止コーティングであるナノクリスタルコートがあります。また、Zレンズには新開発のアルネオコートもある。
レンズ面での反射が多いとフレア等の原因となります。フレアはコントラストを低下させる原因になるので、抜けも悪くなりことが考えられる。
さらに、これも恐らくですがレンズ構成にも多少左右されるのではないかと思います。1本のレンズは何枚ものレンズ群の集まりで構成されていますが、何枚のレンズをどう構成するのかによってコントラストの具合も多少は変わるはずです。
コーティングの具合、さらにはレンズ構成の具合によって、抜けの良いレンズが生まれるのでしょうね。とはいっても、最近のレンズは非常に高性能で高コントラストに写るものが多いので、基本的にどれも抜けの良いレンズになっているのだろうと思います。
あとは、PLフィルターを使えば、状況によってはよりクリアに写るので、抜けの良さに貢献するかも。
Kenko PLフィルター ZX サーキュラーPL 77mm 高透過偏光膜採用 撥水・撥油コーティング フローティングフレームシステム 547724
PLフィルター は多少高くても良いものを使いたいところです。
空気感
空気感もよく分からない単語です。「空気感の感じられる写真」なんて良く聞きます。
カメラは有るものが写り、無いものは写りません。なのに、写真の空気感とは一体何なのか。
これもCANON IMAGE GATEWAYを見てみると、
空気感とはその場の雰囲気(空気感)のこと。
たとえば日の出前の海辺の写真からは澄んだ空気を感じ、満開になったバラの花園の写真からはバラの甘い香りが伝わってくるようなことです。
参考:imagegateway
と説明されています。何か説明になっているような、いないような。
色々と調べてみると、「空気感≒臨場感」と考える人がそこそこ多いようです。臨場感とは実際にその場に立っているように感じることを示します。
光の輝く眩しい感じ、遠くに行くにつれて霞む様子、主題がくっきりし他はやや緩い視点のピント感、色の再現性など、こういったことが上手く噛み合えば、その場にいるような臨場感が生まれ、それが空気感に繋がるということでしょうか。
或いは、写真はそこに有るものしか写せませんが、何をどう強調して写すかによって撮影者の解釈を盛り込むことができます。それが写真の面白いところですね。そして、それは鑑賞者にも伝わります。静寂感とか、爽やかに感じるとか、寒そう暑そうとか、楽しそうとか。つまり、写真は写っているもの以上のものを感じられると言えます。これを空気感と呼ぶこともできそうですね。
いずれにせよ、空気感も見る人の主観に依存する部分がかなり大きいです。
ねむい
先ほどの空気感と比べれば、ねむいは分かりやすいです。
ねむいとは、明るい部分と暗い部分との差が少なく締まりがない写真を表現すること
参考:imagegateway
CANON HPではこのように説明されています。
ざっくり言うと低コントラストで、モヤっとしていることですね。
適当な例ですが、左側は眠いです。「ねむい」は「抜けが悪い」に通じる部分があるかも。
あと、拡大して見た時にモヤっとしているのも「ねむい」と言われますね。ミラーショックで微ブレしているとか、開放で撮影しているとか、絞り過ぎで回折現象が起きているとか。
上は開放F2.8と2段絞ったF5.6で撮影した画像を拡大比較したものです。開放F2.8の方は滲んでモヤっとしています。締まりがありません。ねむいです。
ねむいなと感じた場合はコントラストや明瞭度、シャープネスなどを上げると良いかと思います。
解像感(解像、繊細感、カリカリ、キレ)
解像感という言葉も割と難しいと感じます。というのも、「解像感=解像」ではないからです。
個人的な見解ですが、解像するとか解像度という言葉は、どちらかというとレンズやカメラの性能について言われることが多いかと思います。拡大した時に細かいものまで分離して写っている状態がよく解像している状態です。或いは、解像度が高い、カリカリ、キレがある、繊細感がある、線が細いなどと言われたりします。
またきちんと解像させるには、しっかりピントを合わせ、三脚とレリーズを使い、ミラーショックやシャッターショックに注意するなど、あれこれ気を使います。ちなみに、ちょっとピントが外れているのを「あまい」と言ったりしますね。
一方で、解像感はレタッチした画像について言われることが多いかと思います。解像感を得るにはシャープネスやハイパスフィルターなど様々なレタッチ手法がありますが、基本的にはどれも画像中のエッジを強調させることでシャープに見せます。
つまり、元画像がそんなに解像していなくても、画像処理によって解像しているように感じさせる、これが解像感という訳です。個人的な考えですが。
ここで注意点としてはシャープネスやハイパスを強くかけると、拡大した時にエッジが目立ちます。
上画像(雪面の風紋)はかなり強くハイパスを掛けていますが、エッジが立ち過ぎてガサガサしていますね。拡大しなければ割とシャープに見えますが。
つまり、シャープネスやハイパスはややもすると、細かな部分が潰れて繊細感が落ちる傾向にあります。なので、「解像感=繊細感(解像)」ということには必ずしもならない訳です。
まとめ
最初はよく分からなかった言葉も、カメラを長くやっているうちに馴染みある言葉になります!
ただ、なんとなく使っているので、説明を求められると難しいですね!