カメラをやっていると何度も耳にするダイナミックレンジという言葉。
もし、ダイナミックレンジを意識していないのなら、これを意識して撮影するだけで写真の出来が大きく変わるかもしれません。
今回はダナミックレンジについて書いてみたいと思います。
目次
ダイナミックレンジとは!?
ダイナミックレンジとは、ざっくり言うと「撮像素子(センサー)が感じ取ることのできる最も暗い部分と明るい部分の範囲」です。
例えば、明暗差の激しい状況で撮影した場合。
明るい部分(空)に露出を合わせると他(地上)が実際の見た目以上に暗くなります。
一方で、暗い部分(地上)に露出を合わせると他(空)が実際の見た目以上に明るくなります。
これは一眼レフカメラで写すことの出来る光の範囲に限界があるからです。
この写すことの出来る光の範囲が「ダイナミックレンジ」ということになります。
人間の眼はカメラと比べて圧倒的にダイナミックレンジが広いと言われています(諸説ありますが )。なので、明暗差のある状況でも綺麗に周囲を眺めることができます。
一方で、カメラは人の眼に比べてダイナミックレンジが非常に狭いです。このダイナミックレンジからはみ出た明るさは全て黒か白でしか表現できません。これが白とび・黒つぶれというやつですね。
これが見たような光景で写真を撮れない要因の一つとなっています。
では、ダイナミックレンジが狭いことによるデメリットについて、もう少し書いてみたいと思います。
ダイナミックレンジが狭いことによるデメリット
白とび・黒つぶれにより画像がRAW現像に弱くなる
ダイナミックレンジが狭いと写せる光の範囲も狭いことになるので、当然に白とび・黒つぶれを起こしやすくなります。
そして、撮影した元画像が白とび・黒つぶれしていると、RAW現像であれこれ調整できる幅を狭めてしまうことに繋がります。
一方で、ダイナミックレンジが広いと、それだけ白とび・黒つぶれを避けられ、RAW現像もしやすいことになります。
では一度、白とび・黒つぶれがRAW現像に与える影響を見てみたいと思います。
白とびした部分は現像してもこうなる
写真で最も厄介とされるものの一つが白とびです。
これはRAW現像でも非常に処理しにくいです。
例えばこの写真。
地上側は明るく写せていますが、空が明るく一部が白とびしています。
この部分です。
光芒が出ている部分が白とびしていますね。
これをLightroomとかで露出量・ハイライト・白レベルなどを下げ暗くするとこうなります。
どうでしょうか!?
一見良いように思えますが、よく見ると白とびしていた部分が変です。
この部分を拡大してみます。
なんだかグラデーション(階調)がなくなり、ただのっぺりとした穴のようになっていますね。
これは白とびしたことよってデータが失われているためです。データが無い以上、RAW現像でどうにかなるものではありません。
ちなみに、同じ部分で白とびしなければこのようになります。
雲の微細な様子も色味も表現されていますね。グラデーション(階調)も残っています。
分かりやすく比較。
全然違いますね。
逆光等で写真を撮ると白とびは避けられない部分もありますが、白とびの範囲が大き過ぎると写真のクオリティーを大きく損なってしまいます。
確かに、太陽の周辺だとかがボコッと大きく白とびしていると良くない感じですよね。
なので、白とびは嫌われます。
もちろん、白とびを表現として使う場合もありますが、元画像が白とびしていると調整できる幅が狭まり非常にRAW現像し難くなります。
一方で、黒つぶれはどうでしょうか!?
黒つぶれした部分は現像してもこうなる
黒つぶれは白とびよりもRAW現像で処理しやすいです。
しかし、侮ると厄介です。
例えば、この写真。
空は白とびしていませんが、地上側が暗く一部黒つぶれしています。
そこで、地上を明るくしようとLightroomとかで露出量・シャドー・黒レベルなどを上げ明るくしてみるとこうなります。
いかがでしょうか!?
一見良いように思われますが拡大してみるとザラザラしています。
最初から地上を明るく撮影した写真(黒つぶれしていない写真)と比べてみるとこうなります。
黒つぶれした方は明らかにノイズが乗って画質が落ちていますね。なんか色も変です。
ちなみに、ノイズを無くそうとRAW現像でノイズ軽減だとかをすると塗り絵のようになってしまいます。また、白とび同様にグラデーションが失われることもあります。
よって、黒つぶれも嫌われます。
もちろん、黒つぶれを表現として使う場合もありますが、元画像が黒つぶれしていると調整できる狭まり非常にRAW現像し難くなります。
というように、ダイナミックレンジが狭いと白とび・黒つぶれという厄介者に遭遇する可能性が高くなり、それだけRAW現像に対して耐性が無くなってしまいます。
現像で上手く身動きできなくなる訳ですね。
なので、カメラはダイナミックレンジが広いに越したことはありません。
ダイナミックレンジが広いカメラとは!?
そもそも、機種によて違いがあるので一概には言えませんが、基本的には撮像素子(センサー)が大きい方がダイナミックレンジは広いです。
よって、APS-C機よりもフルサイズ機の方がダイナミックレンジが広いことになります。
しかし、ダイナミックレンジの狭いカメラでも使い方によっては明暗を上手く写すことができるし、逆にダイナミックレンジの広いカメラでも使い方によってはそれを活かせないこともあります。
では、手持ちのカメラでダイナミックレンジを最大限活用するにはどうしたらよいのでしょうか!?
カメラのダイナミックレンジを最大限活用するには!?
基準感度(ベース感度)で撮影
まず、ダイナミックレンジが一番広くなるのは基準感度です。
カメラによって色々あるでしょうが、基本的にISO感度を下げたり(減感)、ISO感度を上げたりするとダイナミックレンジは狭くなります。
なので、ダイナミックレンジを最大限引き出して白とび・黒つぶれを出来るだけ防ぎRAW現像しやすい画像を撮りたいのなら、不用意にISO感度を上げずにISO100(基準感度)で撮影するのが良いです(ちなみに、基準感度はカメラによってISO50だったりISO200だったりします)。
ただ、手ブレや被写体ブレの危険がある時は、仕方ないのでISO感度は躊躇なく上げるべきですが・・・。三脚を使える時は面倒ですが三脚を立てましょう。
カメラは暗さに強い
一眼レフカメラは明るいものよりも、暗いものに強いです。つまり、すぐ白とびはするけど黒つぶれはしにくいです。
なので、明暗差のある状況では白とびしないギリギリの明るさで撮影した方が、カメラのダイナミックレンジを最大限に活用できます。
これはヒストグラムを確認しながら撮影すると良いですね。それで撮影した画像は暗いですがRAW現像で明るくしてやります。
参考:写真の明るさを確認する方法!ヒストグラムの知識!
ただし、それでも暗部を明るくするとノイズが乗ることがあります。ダイナミックレンジのシャドー側の限界を越えているということになりますね。
そもそもカメラのダイナミックレンジを最大限に使ったとしてもたかが知れているので、これだけだと明暗差のきつい状況ではどうにもならないことも多いです。
そのような場合には以下の方法もあります。
ハーフNDフィルターを使う
【KANI】HT PRO +MC REVERSE GND0.9 150*100 170*150 角型ハーフフィルター (150*100*2mm)
ハーフNDフィルターを使い物理的に光の量を調整してあげます。
使うのが面倒ではありますが上手く決まった時の効果は高いです。
いつでも万能という訳ではありませんが、あると重宝する場面も多いです。
参考:新ブランド「KANI」の角型NDフィルター・ハーフNDが登場!高精度ガラス製NDフィルターのご紹介!
HDRや露出ブレンド
露出の異なる画像を複数枚撮影して合成するという方法もあります。
1枚撮りだと撮影できないような明暗差のある状況でも、HDRや露出ブレンドだと難なく写真に納めることができます。
HDRはソフトが自動で合成してくれるので楽です。ちなみに、ソフトによって仕上がりも全然異なってきますが、個人的にはLrがおすすめです。
参考:ブラケット撮影してHDR合成をする。撮影手法の一つとして役に立ちそう!
一方で、露出ブレンドはPhotoshopでマスクを作成し手動で合成していくので手間はかかりますが、より自分のイメージに近ずけることが可能となります。参考:「Raya Pro2.0」で露出ブレンドしてみる!楽に完成度の高いマスクが作れて現像が楽しくなる!
まとめ
ということで、ダイナミックレンジの狭さというカメラの欠点を上手く補いながら撮影・現像するとよりクオリティーの高い写真が撮れると思います。
それがなかなか難しいんですけどね:)