この時期になると撮影したのが星や天の川の写真です。
夏になると天の川の濃い部分が上がってきて綺麗なんですよね。
ただ、星空の撮影には機材選びだったり、カメラの設定だったりと、撮影手法だったりと、普通の風景写真とはちょっと違う点があります。
今回は星空を頑張って撮影してみたいけどよく分からないという方に、それらをご説明したいと思います。
以前、「天の川や星の撮影方法!場所、日時、設定、ピント、撮影後の露出の確認まで全て!」という記事を書いたのですが、その補足的な内容でもあります:)
目次
機材選び
カメラはどんなものを
カメラはどんなものでも撮影はできますが、センサーが大きい方が高感度性能に勝り星や天の川の撮影に適しています。
なので、フルサイズ機の一眼レフカメラやミラーレスカメラが最適と言えます (中判カメラなどは別にして)。
とは言っても、APS-C機の一眼レフカメラやミラーレスカメラでも最近は高感度性能のあるカメラも多いですね。また、高感度性能がなくても撮影方法の工夫によってある程度カバーすることも可能かと思います。
したがって、フルサイズ機が良いのは確かですが、そこにこだわらなくても一眼レフカメラやミラーレス機であればどんなカメラでも撮影できます:)
レンズはどんなものを
カメラはどんなものでも良いと書きましたが、レンズは明るい(F値を小さくできる)ものが欲しいです。
なぜかと言うと、明るいレンズの方が光を多く取り込めるので星や天の川には優位になるからです。
例えば、キットレンズとかだと開放F3.5くらいだと思いますが、これだとちょっと暗いです(もちろん、これでも星の撮影はできますが)。
やはり、星用にレンズを用意するのなら開放F2.8は欲しいです。ちなみに、ズームレンズならF2.8は相当明るい方、単焦点レンズなら更にF1.8やF1.4という更に明るいレンズもあります。
特に、高感度性能に劣るAPS-C機とかなら出来るだけ明るいレンズを選び、ISO感度を抑えられるようにしてあげると良いと思います。明るいは正義。
例えば、sigma20㎜F1.4とか。ただし、APS-C機だと焦点距離が1.5倍になるので、20㎜だとそこまで広角にはなりませんが。
ちなみに、35㎜換算で焦点距離14㎜前後の超広角域なら天の川の根元から先の方まで長く撮影できます。
また、地上景も入れやすいです。
焦点距離24㎜前後なら14㎜の大体2/3くらいというところでしょうか。
バランスは良いと思います。
焦点距離35㎜前後なら星雲の濃いを大きく写す感じです。
これで星空と地上の風景と組み合わせると迫力のある写真が撮れますね。
ということで、具体的にレンズを挙げると、フルサイズ機ならタムロン15-30㎜F2.8やニコン14-24㎜F2.8などの明るい広角ズームが万能です。
TAMRON 大口径超広角ズームレンズ SP 15-30mm F2.8 Di VC USD ニコン用 フルサイズ対応 A012N
最初の1本として便利だと思います。
APS-C機で星や天の川の撮影をするのなら、明るさ重視で20㎜F1.4やF1.8などの単焦点レンズの選択肢も有効かと。
SIGMA 単焦点広角レンズ Art 20mm F1.4 DG HSM ニコン用 フルサイズ対応
フルサイズ機に劣るAPS-C機の高感度性能を、レンズの明るさで補うことができます。
例えば、F2.8でISO3200で撮影している時に、F1.4なら同じシャッター速度のままISO800で撮影することができます。F1.4の威力はすごいです。ただし、そこまで広角感はありませんが。
ちなみに、今年発売されるというシグマ14㎜F1.8も良いのではないでしょうか。14㎜だとAPS-C機でも広角感がありますし、開放F1.8はとても明るいです。
また、APS-C機を使い超広角域で天の川を長く撮影したという場合は、APS-C用の明るい超広角ズームを使うと良いと思います。広角単焦点レンズは明るくて良いのですがAPS-C機では超広角にはなりません。
例えば、トキナー11-20㎜F2.8のような超広角ズームがAPS-C機には良いかと。
Tokina 超広角ズームレンズ AT-X 11-20 F2.8 PRO DX 11-20mm F2.8 Nikon用 フード付属 APS-C対応 634387
これだと焦点距離11㎜が使えるのでかなり広く写せます。しかも、開放F2.8で星空を撮るための最低限の明るさもあります。というか、APS-C用の明るい広角ズームの選択肢は非常に少ないです。
参考:風景や星景の撮影で使える広角域のDXレンズに悩む《レンズ購入参考》。Haletaさんへ。
ちなみに、フルサイズ用超広角ズームをAPS-C機で使うとどうしても広角感が薄れてしまいます。
その他機材
あとは三脚です。
Manfrotto コンパクト三脚 Befree アルミ 4段 ボール雲台キット MKBFRA4-BH
レリーズも。
【ロワジャパン】【プロ専用/液晶LCD/タイマー機能付/撮影回数設定無制限】【PDF日本語説明書あり】Nikon ニコン MC-DC2 対応 シャッター リモコン コード レリーズ
また、ヘッドライトがあると便利ですよ。
モンベル(mont-bell) ヘッドランプ コンパクトヘッドランプ フレッシュグリーン 1124587-FRGN
最低限これくらいは必要だと思います。
カメラ設定
F値について
F値は基本的に開放(一番小さな値)で撮影します。
ただし、細かなことかもしれませんが、開放で撮影すると画面の周辺部に収差と呼ばれるものが出やすいです。
代表的なものがコマ収差と呼ばれるものです。
これですね。星の形が崩れて十字架のように見えます。見た目あまり良くありませんね。
レンズにもよりますが、例えばシグマ20㎜F1.4やニコン20㎜F1.8のような明るい広角レンズで収差は発生しやすいです。
そして、これらを解消するには絞る必要があります。これはレンズによるのですが、F1.4やF1.8などの明るい広角単焦点レンズだと大体F2.8くらいまで絞れば目立たなくなると言われています(1〜2段絞る)。
また、周辺減光なんかも星景写真では厄介な存在ですが、絞ればこれも軽減できます。
ただし、絞ればその分、ISO感度を上げて補う必要が出てきます。そうすると開放F1.4やF1.8の明るさは活かせませんね・・・。
なので、星の収差と高感度ノイズを天秤にかけ、絞るか絞らないか決める必要があります。
一方で、APS-C機での撮影を考えた場合、フルサイズ用のレンズをAPS-C機で使用すると、センサーがフルサイズよりも小さい部、周辺部がトリミングになります。
よって、APS-C機ではフルサイズ機より収差は目立ちません。
私自身が試した訳ではありませんが、ほとんど開放で撮影しても良いくらいではないでしょうか!?
これなら収差を気にして絞るよりも、開放F値で撮影してISO感度を抑えた方がメリットがあるのではと個人的には思います。
ということで、ちょっと長くなってしまったのでF値につていまとめると、
- 基本的に開放F値で撮影
- 撮影してみて収差が目立ち気になるなら高感度ノイズの具合と相談しながら1〜2段絞る
- ただAPS-C機なら収差は目立ちにくいので開放F値で撮影しISO感度を抑えた方がメリットあるかも
です。
これを目安にして撮影し好みのF値を探れば良いと思います。殆ど開放F値になると思いますが。
シャッター速度について
次にシャッター速度です。
星は日周運動をしているのでシャッター速度が長いと線状にブレてしまいます。
これではあまり見た目がよくありませんね。
ただし、同じシャッター速度でも広角である程目立ちにくいです。逆に、20㎜、24㎜、35㎜、と焦点距離が長くなるにつれて星のブレは目立ちやすくなります。
これについて「500ルール」というのもがあります。
これは「500÷焦点距離」で星のブレが目立たない上限のシャッター速度を求めることが出来るというものです(APS-C機なら焦点距離を1.5倍にして計算してください)。
例えば、フルサイズ機で焦点距離14㎜なら約35秒(500÷14)、焦点距離24㎜なら約20秒(500÷24)、焦点距離35㎜なら約14秒(500÷35)という具合です。
これ以下のシャッター速度なら星のブレは一応目立ちにくいことになります。
とは言っても、「500ルール」で得たシャッター速度で撮影すると、SNSとかで見るくらいなら殆どブレは気になりませんが、やはりA4とかA3にプリントするとブレが若干気になるくらいにはなります。
なので、鑑賞するサイズにもよりますし、シャッター速度上限の一つの目安として捉えると良いかと思います。
ということで、シャッター速度については、まずは「500ルール」で試してみる。それで星のブレが気になるのなら、少しづつシャッター速度を短くして好みを探れば良いと思います:)
大体、シャッター速度は15〜25秒くらいが殆どだと思いますが。
ISO感度について
これまででF値とシャッター速度が決まりました。あとはISO感度です。
これは撮影地の空の暗さによって変わります。
なので、試しでISO1600くらいで撮影してみて、それで写真が暗ければ少しずつISO感度を上げて最適な数値を見つければ良いです。
この時にヒストグラムで写真の明るさを確認すればミスが少なくなります。
というのも、星空の撮影では周囲が暗いので、モニターを目で見るだけだと適切な明るさを判断しにくいからです。家に帰って見るとやっぱり暗かったということが多々有ります。
ヒストグラムの目安としては、グラフの左端から中央の間(左端から1/4くらい)の位置にグラフの山が来れば大体問題ありません。
こんな感じですね。
ということで、この章をざっくりまとめると、
- F値は基本的には開放F値(収差が気になるなら絞ることも)
- シャッター速度は「500ルール」を目安にして調整する
- ISO感度はISO1600位を目安に撮影してみて明るさを確認(ヒストグラムの左端から1/4くらいに山 )、明るかったり暗かったりすれば調整する
という具合です。
ちなみに、私は焦点距離14㎜、F2.8、SS20秒、ISO4000の組み合わせで星空を撮影することが多いです。
次に、天の川を撮影する際の日時や方角、ピントの合わせ方などですが、それはこちらをご参考くださいませ。
そして、撮影後の現像も大切です。できればPhotoshopを使えれば綺麗に仕上げることができます。
Photoshopでの現像については様々な方法がありますが、一つの方法として以下をご参考ください。
最初、Photoshopは難しく感じるかもしれませんが、慣れればこれなしでは現像できなくなります:)
その他撮影手法
以上の方法で星空を撮影していると、どうしても上手くいかないことが出てくるかと思います。
例えば、SNSなどで星空も地上景も明るく綺麗に写っている写真を見かけることがありますが、なかなかこのようには撮影できません。
普通に星空を撮影すると大体地上景は黒く潰れてしましますね。それを現像で明るくしてもノイズだらけです。逆に、地上景を明るく写そうとすると、今度は星が上手く写りません。
一体どうすれば星空も地上景も綺麗に写せるのか・・・。
星空と地上景を別撮り
星空も地上景も綺麗に写す方法として、星空と地上景を別撮りして合成するというものがあります。
合成というと躊躇する方もいるかもしれませんが、最近ではかなり広く行われている方法の一つとなっています。また、カメラの欠点を補う上でも有効だと思います。
この方法では、星空はこれまで通りに撮影し、地上景はカメラの設定を変えて撮影します。
例えば、星空は焦点距離14㎜、F2.8、SS20秒、ISO4000で撮影し、地上景は焦点距離14㎜、F2.8、SS160秒、ISO1000などで撮影します(設定は人それぞれです)。
それでPhotoshopを使い合成します。
具体的な合成方法は以下を一つの方法としてご参照くださいませ。
また、最近になって私は地上景を加算平均ということをしてよりノイズを減らしています。この場合では、焦点距離14㎜、F2.8、SS160秒、ISO1000で3枚撮影し加算平均しています。時間が掛かりますが・・・。
加算平均については以下をご参照くださいませ。
加算平均と聞くと難しく感じるかもしれませんが、やってみると以外と簡単で、しかも効果があります。
この方法だとフルサイズ機でもAPS-C機でも、地上景はかなり綺麗に仕上げることができます。
こうして地上景のクオリティーが上がってくると、今度は星空のクオリティーが気になってきます。
赤道儀を使う
星景にこだわりが強くなってくると、星の微妙なブレやノイズも気になってきます。
だんだんと要求するものが高くなるんですね・・・。
こうなると赤道儀という機材が欲しくなってきます。
Kenko ポータブル赤道儀 スカイメモS シルバー 455166
赤道儀は星の動きに合わせてカメラを動かしてくれるので、シャッター速度に制約が無くなります。基本的にはいくらシャッター速度を長くしても星はブレません。
なので、ISO感度を落とすことも、F値を絞ることも可能となります。
こうなるとフルサイズ機もAPS-C機も、またコンデジも殆ど関係無くなりますね。
ただし、カメラが星を追尾するので地上景がブレます。この場合は地上景を別撮りして上手く合成する必要が出てきます。
これが今の所究極でしょうね:)
赤道儀に関してはこちらをご参考くださいませ。
まとめ
以上、星や天の川を撮影する為の機材選び・カメラ設定・撮影手法についてでした!
いろいろと細かなことを書きましたが、まずは難しいことを考えず手持ちの機材で撮影してみることをおすすめします:)
星空の撮影は手間がかかるし、奥が深いです。ただその分、上手く撮影出来た時の喜びは大きいです!
ワイズさん
おはようございます!
ご指導有難うございます!
500の法則は初めて知りました。
次回は6月20日~7月2日位ですかね…(笑)
以前、羊蹄のアーチの作品をご披露していたか?と…
パノラマって周辺収差が有ると難しいのですよね?
動いている星々をどう重ねるのかな?などなど
疑問は沢山有るのですが…
ソフトがないので、半ば諦めですが
何か簡易にできる方法があれば
ご披露頂ければ嬉しいです。
昨日知ったのですが
近所でホタルが見れるんですよ…
規模はわからないですけれども
初挑戦してみようかと思っています。
きやっちさん
コメントありがとうございます:)
そうですね、6月20日~7月2日位、私も狙っています!
パノラマは合成すると写真の中央付近を使われることになるので、逆に収差が目立たなくなると聞いたことがありますよ!
星の動きもSS2,30秒くらいなら問題なく重なります(ソフトが自動でうまいことしてくれます)。
おそらく無料のソフトとかも探せばあると思います;)
機会があれば書いてみたいと思います!
蛍ですか!?
私の住む地域にはいないので羨ましいです:)
近所なら何度もいけますね!
初めまして、とても参考になるので楽しく読ませてもらっています。
画像処理ソフトの事でお聞きしたいことがあります。
現在LightroomをCDで買い、インストールして使っています。
毎月支払うのがなんとなく嫌だったのでCDーROMを購入しました。
後でわかったのは「かすみの除去」という項目が無い事でした。
星撮影での合成をしたくなりフォトショップも欲しくなったのですが、
オンライン版かパッケージ版のどちらがいいのか迷っています。
フォトショップでやりたい作業は蛍の撮影の合成で使う比較明合成やこちらで紹介されている地上部と星を別で撮影して後から合成する作業などです。
他にどんな事が出来るのかよくわからないので今現在やってみたい事です。
毎月支払うのを選択した場合、半永久に支払い続けないといけません。
買ってしまえばちょっと高いかもしれませんが長い目で見れば買ったほうが安いと感じます。
ただ、Lightroomのように購入版とオンラインで機能があったりなかったりがあると辛いのかなと感じます。
オンラインなら常に最新版が使えるというメリットがあるのはわかるんですが、どちらがいいのか迷っています。
オンライン版と購入版とでは機能のある無いなどの差があるのでしょうか?
よろしくお願いします。
ヨシカシさん
初めまして、コメントありがとうございます!
そうですね、かすみ除去はLightroo CCにしかありませんね。
Psの購入版(Elements)とオンライン版(CC)の違いに関しては、こちらに詳しくまとめてあります。
参考:Photoshop、Photoshop Elements、Photoshop Lightroom の違いについて
ただ、これを見ても私も正直ちゃんと違いが分かりません・・・。オンライン版しか使ったことがないので。
Lrのかすみ除去みたいな大きな違いはないのかなと思います。
好きな方を使うのが一番だと思います:)
こんばんは。
返信ありがとうございます、参考URL拝見しましたがよくわからかったです。
使った事もないソフトなのでさっぱりでした(^^;)
話は変わりますが夏休みに北海道にバイクで旅行する予定です。
道東を攻めるつもり予定で天の川とこちらで紹介されていた津別峠からの雲海をカメラに収めたいと考えております。
天の川は何処からでも見れそうな気もしますが、津別峠の雲海は津別峠展望施設からの眺めなのでしょうか?
ヨシカシさん
ご返信ありがとうございます!
バイクで北海道は最高でしょうね:)
そうです、雲海は津別峠展望施設からの眺めですよ。ルートが2つあり、津別側しか開通していないのでご注意ください!
ちなみに、津別峠は星も綺麗ですよ、方向的にやや木が邪魔になりますが。
こんばんは、ルートが2つですか?
屈斜路湖から588号線を登って津別峠展望施設に行けば良いのでしょうか?
昼間に下見しに行くつもりです、夜は通行止めになるのでしょうか?
ヨシカシさん
屈斜路湖側からはいけないので、津別側から行きます:)
588号線は通り抜けできません。
津別峠展望台のHPを見てみればわかり易いかもしれません。
夜も開通してますよ:)
なるほど、貴重な情報ありがとうございます。
HPで確認出来ました(^^)
ヨシカシさん
ご返信ありがとうございます!
お役に立てて良かったです:)
良い旅になると良いですね!
初めまして。
いつも美しい写真を拝見しております。
唐突に「天の川が撮りたい」と(素人は恐いですね)思いネットで調べたところ、今までなんとなく知っていた赤道儀の話があり、その設定を見て、最初戸惑いましたが、自分、ペンタックスK1ユーザーなので、アストロレーサー機能が大活躍しました。雪の東京駅でもその強力な防塵防滴性能からフラッシュの部分だけ保護しておけばいいので、歩きながら撮影できてしまいました。これでもう少しAFが良ければなあ、と思うのですが。
これからもよろしくお願いします。
さとう あきひろさん
初めまして、コメントありがとうございます!
ペンタックスのアストロレーサーは本当に羨ましいです!
ペンタックスの耐久性はもはやニコンを超えていますね。ペンタックスもフルサイズミラーレスの時代が来るのでしょうかね:)
それも楽しみです!
こちらこそよろしくお願いします!