三脚選びは難しいです。最初で理想通りの三脚を選ぶのは至難の技と言っても過言ではありません。
私も何本も三脚を買い直してきました。それでもまだ改善点があります。
そこで、これから1本目の三脚を買おうとしている初心者の方に、あるいは2本目の三脚を買おうとしている中級者の方に、三脚の購入の際に知っていて欲しい事柄についてまとめてみたいと思います。
最後に勝手におすすめ三脚もご紹介します。
目次
三脚の選び方のポイント:耐荷重について
耐荷重の表記は当てにならない
三脚の剛性の基準となるのが耐荷重です。耐荷重は三脚の上に載せることのできる機材の重さを示しています。よく「耐荷重○○kg」と表記されていますね。
ただ、これが曲者。と言うのも、耐荷重の表記には基準がないからです。同じような仕様の三脚でも、あるメーカーでは耐荷重2kgと表記されているのが、別のメーカーだと耐荷重5kgと表記されていたりとバラバラです。なので、耐荷重を過信してしまうと想像よりも不安定で機材を載せられないという事になりかねません。
耐荷重はあくまでも目安として受け止めましょう。では、何を基準として三脚の剛性を測れば良いのか。
それがパイプ径です。
パイプ径を目安にしよう
三脚の剛性を考える場合、パイプ径(脚の太さ)で判断するのが重要となります。これを基準とすると異なるメーカー間でも比較しやすいです。
当然、脚が太い方が剛性が増し安定感が生まれます。ただし、それだけ三脚の重さや大きさが増し携帯性は落ちます。
では、パイプ径何㎜くらいを、どのような基準とすれば良いのかと言うと、それは以下の通りです。
- 20~22㎜・・・携帯性をより重視。
- 25~28㎜前後・・・安定感と携帯性のバランスが良い。
- 30㎜以上・・・安定性をより重視。
だいたいこんな感じ。
パイプ径が20~22㎜は脚が細めなので安定感には欠けますが、その分軽いので携帯性は増します。荷物を増やしたくない旅行や野山のトレッキングに良いかもしれません。ただ、重い機材には向いていなく、一眼レフカメラのエントリーモデルやミラーレスカメラ以下の機材に適しているかと思います。
パイプ径が25~28㎜前後の三脚はそこそこの脚の太さなので、そこそこ安定感もあり携帯性も見込めます。フルサイズ一眼レフカメラでもそれなりに実用に耐え、安定感と携帯性のバランス的には一番パフォーマンスは高そうです。私はパイプ径が28㎜の三脚を登山用に使用していますが、フルサイズ機(D750)でも問題なく使えています。
パイプ径が30㎜以上の三脚は脚が太く携帯性は落ちますが安定感は高いです。望遠レンズなどの重くブレやすい機材の使用に適しています。私はパイプ径が33㎜の三脚も使っていますが、ガッチリとした安定感を感じられます。
以上ですが、耐荷重はあくまでも目安にして、それに加えパイプ径に注目して三脚を選べば失敗しにくいかと思います。
三脚の選び方のポイント:脚の段数とロック方式について
段数は安定性と携帯性の駆け引き
次に脚の段数についてです。
三脚の脚はモノによって3段、4段、5段・・・と異なります。
これは4段と3段の脚の写真。
例えば、同じ高さの三脚でも段数の多い方が、畳んだ時にぎゅっとコンパクトになります。つまり、携帯性を重視するなら段数は多い方が優位です。
しかし、段数が多くなるとそれだけ伸ばした際の脚が細くなり安定感が減っていきます。ちなみに、一段ごとに脚は2~3㎜程度細くなるようです。なので、例えばパイプ径が28㎜の三脚でも5段になると一番下の脚でパイプ径16㎜程になったりします。これはかなり頼りない感じです。
なので基本的には、安定感を重視したいのなら3段、安定性と携帯性のバランスを取りたいのなら4段、多少安定感を欠いても携帯性を重視したいのなら5段というのが目安になります。
ちなみに、段数が多いと脚を伸ばしたり畳んだりする際の手間が増えて面倒という側面があったり、逆に3段などと段数が少ないと畳んでも足が長いので狭い場所での扱いが窮屈だったりもします。私は持ち運び用の三脚は4段にして、それ以外は3段にしています。
ロック方式で使い勝手が違う
脚のロック方式は主にレバー型とナット型の2つがあります。
レバー型は素早く操作できるというメリットがある一方で、簡単には分解ができないのでメンテナンスに不利。あとネジが緩んで固定が甘くなることがあるなどのデメリットもあります。
私はレバー式の三脚も使っていましたが、特に分解清掃できない事には困りました。海や山などで撮影すると殆ど必ず砂を噛みます。そうするとレバー式は分解清掃できないので、ずっとジャリジャリ音が鳴るし、動きも引っ掛かりが出来てスムーズ性が失われます。
一方で、ナット式は簡単に分解できるのでメンテナンスに優位です。あと、持ち運ぶ時にレバー式は引っ掛かって邪魔になる時がありますが、ナット式はスッキリしていて持ち運びにも便利です。ただ、ロックできているか否か目視できないので、たまに使いづらいと感じる時がありますね。ちなみに、安価な三脚以外は殆どナット式となっています。
以上ですが、特別な目的がなければ4段のナット式が一番無難な感じかなと思います。
三脚の選び方のポイント:素材について
三脚の素材には大きくカーボンファイバーとアルミニウムの選択肢があります。
カーボン製の三脚は軽くて丈夫という特徴があります。なので、同じようなスペックの三脚でもカーボンの方がアルミよりも8~7割程の重さで済みます(8~7割程って差が少ないように感じますが、手にすると全然重さが違って感じます)。また、振動もカーボンの方が吸収しやすいようなのでブレ耐性が強いです。
ただし、高価というデメリットがあります。最近では安価なカーボン三脚が増えましたが、それでも1.5~2倍近い価格差があります。
一方でアルミ製の三脚は比較的安価で買いやすいです。また、カーボンに比べ重いですが、その分ずっしりとした安定感があると言われています(三脚が重い方がカメラを載せた時に重心が下にきます。なので風の強い時などに優位)。ただし、振動は伝わりやすいようです。
以上、アルミとカーボンにはそれぞれ一長一短がありますが、三脚の素材としてはカーボンファイバーの方が総合的に優れているようです。実際にそれぞれ長く使いましたが、やっぱりカーボンは良いです。ただし、高価なので最初からは買いにくいかもしれませんね。
三脚の選び方のポイント:高さ・収納高・重さについて
三脚の高さ選びの基準としてアイレベル(目線の高さ)を考えてみると良いかもしれません。
三脚の高さがアイレベルまであると、屈まなくてもファインダーを覗けるので便利です。また、手前に柵などがある場所でも、三脚は高い方が優位だったりします。ただし、それだけ三脚は大きく重くなるし、ローポジションでの撮影などで不利になることもあります。
一方で、最近のカメラはモニターがチルト式やバリアングル式で、ファインダーを覗かなくても画像を確認できるようになっています。なので、無理に大きく重い三脚でアイレベルを確保しなくても良いという考え方もあります。また、三脚は低い方がローポジションでの撮影に優位だったりします。
上記の点をヒントにして三脚の高さを考えると良いかもしれません。ちなみに、三脚の高さの表記には雲台の高さが含まれていたりいなかったりするので注意が必要です。また、カメラの高さも加わるので、身長174cmの私だと三脚だけの高さで145cmもあれば、ほぼアイレベルになります。
あとは開脚も考慮すると良いです。
3段くらい開脚すると便利です
もちろん、収納高と重さもチェックしましょう。数字以上に三脚は大きく感じます。
雲台について
最後に雲台について触れたいと思います。安価な三脚だと脚と雲台がセットになっていますが、ちょっと高い三脚だと別売ということも多いです。
雲台には主に自由雲台と3WAY雲台があります(他にはギア雲台やビデオ雲台などがあります)。
自由雲台はボールヘッドがクルクル回転することで、素早く自由度の高い構図決めが可能となっています。
デメリットとしては微妙な構図決めが苦手なことです。雲台の固定を解除すると全方向に動いてしまうので、あとちょっとだけ上にとか、あとちょっとだけ右に、みたいな微調整が難しいです。なので、マクロ撮影や超望遠での撮影など微細な調整が必要な場合には扱いが難しいかもしれません。
3WAY雲台は横縦斜の軸を独立して調整できる雲台です。なので、自由雲台で苦手だった微細な調整が比較的しやすいです。
ただし、自由雲台のように素早い構図決めは苦手です。あと、自由雲台よりも可動域に制限があるので、使いにくいと感じることがあるかもしれません。また、ハンドルがあるので収納性も劣ります。
ちなみに、私の観測範囲では自由雲台を使っている方が多い印象です。
あとは、クイックシュープレートの固定様式についても見てみましょう。
雲台の使用にはプレートと呼ばれるものをカメラの底に取り付け、それを雲台のクランプ(台)と呼ばれる部分にはめ込み固定します。
このプレートはメーカーによって大きさがバラバラなので雲台が複数ある場合に非常に不便です。いちいちプレートの交換が必要になります。また、固定も然程強くなくブレの原因になることがあります。
メーカー間で互換性がありません。
そこで最近流行っているのがアルカスイス互換です。アルカスイス互換はプレートを万力のように挟み込むことで固定します。
そして、アルカスイス互換であれば異なるメーカー間でも同一のプレートを使い回すことが可能です(一応相性がありますが)。なので、複数雲台があってもプレートの交換が不必要です。
また固定力があるのでブレにくいメリットもあります。
プレートも種類も豊富でL型プレートなど便利なものも使用可能です。
参考:L型プレートを買って縦構図の操作性が抜群に。天の川のアーチをパノラマ撮影したい。
なので、個人的にはアルカスイス互換の雲台をおすすめします。
と言うことで、上記したことを考慮し三脚を選べば、自分のおすすめ三脚が見つかるはずですが、勝手に独断でおすすめ三脚をご紹介したいと思います。
おすすめの三脚
最初の1本におすすめの三脚
最初の1本目を選ぶのが一番難しい。
まず個人的にはとりあえず安いのを1本使ってみることをおすすめします。価格は1万円前後くらいので。1万円くらいの三脚であればそれなりに使えるはずです。
ただし、やはり1万円の三脚ではどんなに評価が良くても、あれこれ不満点が出てくるはず(出てこなければそはそれで良し)。なので、次にその不満点を埋める三脚を買えば良い。いきなり正解の三脚にたどり着くのは困難なので1度試しに使ってみるという訳です。
パイプ径25㎜(耐荷重10kg)、4段ナット式、アルミ製、全高(センターポールを伸ばして)162cm、最低高42cm、収納高47.5cm、重さ1695g(雲台込)、自由雲台(アルカスイス互換)の三脚です。
私は同社の同レベルの製品を使ったことがありますが、APS-C機やミラーレス機くらいなら普通に使えるかなという感じでした(レンズは標準まで。脚はまだしも、セットになっている雲台が弱い感じです)。最低高が42cmなのでちょっとローポジションに不利ですが、全体的にコスパはすごく良いと思います。
とりあえず最初の1本におすすめの三脚です。
ただ、安すぎるのは不安という方にはマンフロットの定番三脚であるbefreeも良いかと思います。最初の1本としてはやや高価に感じるかもしれませんが。
Manfrotto 三脚 Befreeアドバンス アルミ 4段 自由雲台 ツイストロック式T三脚キット ブラック MKBFRTA4BK-BH
パイプ径22.5㎜(耐荷重8kg)、4段ナット式、アルミ製、全高(センターポールを伸ばして)150cm、最低高40cm、収納高40cm、重さ1540g(雲台込)、自由雲台の三脚です。
ちょっと脚が細目なのと、雲台がアルカスイス互換ではないのが気になります。最低高も高め。でもメジャーな三脚です。
カーボン製三脚ならこれ。
SIRUI 三脚 脚のみ 中型カーボン三脚 4段 T-2204X【国内正規品】
パイプ径28㎜(耐荷重15kg)、4段ナット式、カーボン製、全高(センターポールを伸ばして)142cm、最低高14cm、収納高48.5cm、重さ1300gの三脚です。
参考:SIRUI(シルイ)の三脚(T2204X)を購入!カーボン製だけど安価でコスパ良!
私はこの三脚を3年ほど前から登山やトレッキング用に使用しています。カーボン製で高級感もありとても良いです。使用感ではフルサイズ一眼レフと大三元などの重めのレンズでも使えます。ただ、300㎜以上の超望遠系は無理がある感じ。高さもやや低めです。
ちなみに、雲台は別売です。
これは耐荷重25kg、重さ430gの自由雲台(アルカスイス互換)。SIRUIの雲台はコスパが良いですが、氷点下の環境で動きが渋くなるという欠点があります。
グレードアップさせたい人におすすめの三脚
三脚はすでに持っているけどグレードアップさせたいという中級者の方にはこれ。もちろん、最初の1本に買っても良いですが。
パイプ径32㎜(耐荷重15kg)、4段ナット式、カーボン製、伸高(センターポールなし)130cm、最低高8cm、収納高48.5cm、重さ1380gの三脚です。耐荷重20kg、重さ496gの雲台がセットになっています。
Leofotoは最近話題のメーカー。パイプ径も太くしっかりしていると思います。欠点は高さでしょうか。
これも。
Leofoto LS-365C カーボン三脚 レンジャーシリーズ
パイプ径36㎜(耐荷重20kg)、5段ナット式、カーボン製、伸高(センターポールなし)152cm、最低高8cm、収納高48cm、重さ1910gの三脚です。
個人的には5段という点が気になりますが、パイプ径36㎜で太いので結構しっかりしているのかなと思います。高さも十分あります。雲台はセットになっていません。
参考:Leofotoの選び方!三脚と雲台をまとめて比較してみる!
あとはこれ。
GITZO 三脚 脚のみ システマティック三脚 3型4段ロング カーボン GT3543LS
パイプ径33㎜(耐荷重25kg)、4段ナット式、カーボン製、伸高(センターポールなし)146cm、最低高9cm、収納高57cm、重さ2030g。Gitzoシステマティック3型4段Lです。
最終的にはGitzoです。私は3型3段Lを使用していますが3型4段Lはより汎用性が高いと思います。これを買えばもう悩みはなくなるはずです。
参考:Gitzo(ジッツオ)の購入を検討中!マンフロット055から買替えでどれを選ぶか。
三脚1本では対応できない
残念ながらあらゆる場面に1本で対応できる三脚はありません。
剛性と携帯性はトレードオフです。しっかりとした剛性の三脚を使いたければ携帯性を犠牲にする必要がありますし、携帯性を優先させたければ剛性を犠牲にする必要があります。
なので、あらゆる場面に三脚を対応させたければ、持ち運び用のコンパクトな三脚と、持ち運びを考慮しない大型の三脚の2本は少なくとも必要になると思います。中には3本、4本を運用している方もいます。
もちろん、いつも車移動というのなら大きめの三脚1本で事足りますし、軽い機材しか使わないのなら軽量な三脚だけで問題ないと思いますが。
まとめ
以上、カメラ三脚の選び方のポイントと初心者から中級者におすすめの三脚でした!
ぜひ、参考にしていただければと思います!
三脚選びに迷い苦しみ、夢にまで出てきた自分にとって、素晴らしい記事でした(T_T)
ちょうど本日、フルサイズ機(PENTAX K-1Ⅱ)が届きます!
レンズは15-30mmと28-105、150-450にしたのですが、三脚が3,000円くらいのしかなかったので、三脚も買おうと思っています。
当初はまさにK&FのKF-TM2534が耐荷重も余裕あるし、いいなと思ってましたが、ワイズカメラさんの過去の記事を見て、やめとくことにしました(;・∀・)
今はこれまたワイズカメラさんの過去記事を参照にManfrottoの055+3way+自由雲台をメインに登山用はbefreeにしようかと思っています。ただ、この記事を読んで、もうちょっと再考が必要かなぁと思えてきました。
三脚ってカメラ機材の中ではトップクラスに奥深いですね・・・^^;
ぽんすけさん
夢にまで出てきたのですね笑
良いタイミングで書けて良かったです:)
KF-TM2534は悪くないですが、PENTAX K-1Ⅱには厳しいかもしれませんね。
マンフロット055は性能と価格的に手にしやすいです、befreeあたりはちょっと不安定で怖いかもしれませんね・・・。
三脚は本当に正解がないです笑
アドバイスありがとうございます!
ちょっとお金貯めて登山用はワイズカメラさんお墨付きのSIRUIにしようと思います!
ぽんすけさん
ご返信ありがとうございます!
色々比較して検討して見てください!
三脚は、年に一度の花撮影と家でのテーブルフォトでしか
使わない撮影スタイルなので、あまり重要視していなかったのですが
始めはカメラだけだった撮影が、照明や傘やモニターを使う花撮影に
なってくると、腕は2本しかないので、その役目を三脚に負わせると
軽い三脚では役不足となり、とうとう4脚も所持する羽目になりました。
でも、「いつかはGITZO」だけにはならないように考えています。
(高くて買えないんですけど)
mickeyさん
照明や傘やモニターという沼もありますね笑
GITZOに照明や傘は贅沢!?なような気もします笑