写真をちょっとやっている方であれば、「明るレンズ」、「暗いレンズ」が何を意味するのかは、よく分かっていらっしゃるかと思います。
ただ、たまに何か勘違いされている方がいるのかなと思うことがありました。
なので、今回は明るいレンズ・暗いレンズとは何かについて書いてみたいと思います。
明るいレンズについて時々見かける勘違い
たまにレビューサイトを見てると、「明るいレンズだけあって写真も明るく撮れます」、「暗いレンズなので明るく撮れません」みたいな文章を見かけることがあります。
これ何か勘違いしているのかなと。明るいレンズでも、暗いレンズでも、写真は同じ明るさで撮ることはできます。
写真が明るくなるか暗くなるかは、カメラの設定次第で、レンズの明るさ暗さは関係ありません。
では、よく言う「明るいレンズ」とは何なのか!?
明るいレンズとは!?
F値とは
レンズの中には絞り羽根という機構があります。
これが絞り羽根です。これが開閉することでカメラに入り込む光の量を調整します。人の目でいう瞳孔みたいなものです。
そして、この絞り羽根の開き具合を数値化したものがF値です。F値は小さい方が絞り羽根が大きく開き、光をたくさん取り込めます。逆に、F値が大きい方が絞り羽根が狭く閉じ、入り込む光が少なくなります。
このような感じですね。
このF値が明るいレンズ・暗いレンズに関係してきます。
明るいレンズはこれのこと
F値を一番小さくした状態を開放F値と呼びます。開放F値はレンズの性能によって変わってきます。F1.4まで小さくできるレンズもあれば、F5.6までしか小さくできないレンズもあります。
そして、開放F値を特に小さくできるレンズのことを明るいレンズと呼びます。一般的には以下のような感じです。
単焦点レンズなら開放F2.0以下
ズームレンズなら開放F2.8以下
単焦点レンズは基本的にレンズ構成が単純なので、開放F値を小さくしやすいです。なので、単焦点レンズで開放F2.8くらいでは特に明るいとは言われないようです。開放F2.0以下で明るいと言われることが多いです。
逆に、ズームレンズはレンズ構成が複雑で、開放F値が大きくなる傾向にあります。なので、開放F2.8くらいでも明るいと言われます。
開放F値はレンズ名称などで確認できます。
左のレンズはズームすると開放F値が大きくなるタイプです。F3.5-F5.6で開放F値が変化します。この開放F値では明るレンズとは言えませんね。右のレンズはズームしても開放F値が一定です。ズームレンズで開放F2.8なので明るいレンズと言えます。
単焦点レンズの場合はズームできないので開放F値は変化しません。
上のレンズは開放F1.4で明るいレンズと言えます。
ちなみに、焦点距離によって明るさの基準が変わってくるようです。例えば、500mmや600mmなどの長い焦点距離では、開放F5.6でも十分に明るいと言えます。これは人によっても感覚が変わってくるのかなと思います。
とりあえず目安としては、単焦点レンズで開放F2.0以下、ズームレンズで開放F2.8以下で明るいレンズになると考えておきましょう。
では、明るいレンズが良いレンズとされることが一般的ですが、それは何故なのか!?
明るいレンズのメリット
シャッタースピードを速くできる
明るいレンズは絞り羽根をより開くことができるので、一度にたくさんの光をカメラに取り込むことが可能です。
なので、薄暗い場所などでもシャッター速度を早くできます。そのぶん手ブレや被写体ブレを抑えやすいです。ISO感度をあげればシャッター速度は早くできますが、ノイズが発生するというリスクもありますからね。
ちなみに、明るいレンズはシャッター速度を早められることから、ハイスピードレンズと呼ぶこともあります。
ボケを大きくできる
F値は小さい方がボケやすいです。
なので、明るいレンズほどF値を小さくできるので、大きくトロけるような美しいボケを表現することができます。
特にポートレートなどを撮る人では、この観点で明るいレンズが好まれます。風景の撮影などでは絞って全体にピントを合わせることが多いので、レンズの明るさはあまり必要とされないようです。
画質が良いかもしれない
レンズは開放では解像力が落ちる傾向にあります。基本的には少し絞った方が良いです(1、2段程度)。
そうすると例えば、明るいレンズで1、2段絞ってF5.6の状態と、暗いレンズであまり絞らずにF5.6の状態では、前者の方が画質が良いことが多いです。というように、同じ明るさに絞っても明るいレンズに利点があるわけです。
以上のように明るいレンズは高性能とされています。では、逆に明るいレンズのデメリットとは何なのでしょか!?
明るいレンズのデメリット
高価になる
明るいレンズほど価格が高価になります。例えば下の2つ。
1本目は開放F2.8で明るいです。価格は20万円後半もします。一方で、2本目は開放F4で明るくはありません。価格は10万半ば。
このように同じ70-200mmの望遠ズームレンズですが、明るさによって価格が2倍近く変わってきます。
特に、ズームレンズで明るくしようとすると、レンズ構成などが複雑になるようです。それだけコストがかかり高価なレンズになります。
単焦点レンズであれば明るいレンズでも比較的安価で手に入ります。単焦点レンズが好まれる理由の一つです。
重く大きくなる
次に、明るいレンズほど重く大きくなる傾向にあります。
先ほどの2本のレンズ。
1本目の明るい方は1430gもあります。2本目の明るくない方は850gで比較的軽いです。
明るいレンズは光を多く集めるために太くなる傾向にあり、またレンズ構成も複雑化します。ゆえに大きく重くなる。明るいレンズは利便性が高く、ボケが綺麗ですが、持ち歩くには覚悟が必要です。
中にはこんなレンズもありあます。
SIGMA 望遠ズームレンズ APO 200-500mm F2.8/400-1000mm F5.6 EX DG キヤノン用 フルサイズ対応
200-500mm F2.8、テレコンをつけると400-1000mm F5.6という明るいズームレンズですが、重さは15,7kgになります。
もはや大砲です。
色々な明るいレンズ
明るさはレンズの個性です。中には尖ったレンズが存在します。
そんな尖ったレンズをご紹介したいと思います。
ツァイスPlanar 50mm f/0.7
50mmという標準レンズでF0.7。世界で最も明るい写真用レンズです。1966年のフォトキナで発表されました。
このレンズは月の暗部を撮影するためにNASAの依頼により10本だけ製造されています。当時の高感度フィルムでは月の暗部を撮影することが出来なかったために、より明るいレンズが必要だったとか。また、1968年12月21日発のアポロ8号に搭載されました。
レンズ構成は6群8枚らしく、思ったよりもシンプルですね。
Canon EF1200mm F5.6L USM
EFレンズ史上最も長い焦点距離を持つレンズとなっています。この焦点距離でF5.6は明るいです。
価格は税別980万円。重さは16.5kg、大きさは228x836mmあります。鳥屋さんでも使っている人は流石にいないのでは・・・。
Nikon 58㎜ f0.95
F0.7まではいきませんが、58㎜F0.95もかなり明るいです。
これはニコンのミラーレスカメラに採用されているZマウント用レンズです。また発売になってはいませんが、2019年のフォトキナには展示されていましたね。
その薄い被写界深度と美しいボケは魅力的です。これならなんとか買え範囲ではあります。
シグマ Art 14mm F1.8
SIGMA 単焦点超広角レンズ Art 14mm F1.8 DG HSM ニコン用 フルサイズ対応
このレンズもだいぶ尖っていると思います。14mmという超広角で開放F1.8です。
広角レンズではなかなか明るく作るのが難しいようで、このレンズは唯一無二となります。星撮りには有名なレンズですね。
Nikon AI Zoom-Nikkor 1200-1700mm f/5.6-8P IF-ED
焦点距離1200-1700mmでF5.6-8なので明るいズームレンズと言えるでしょう。フルサイズ用ズームレンズとしては世界最長の焦点距離です。最大径×最大長は237×888mmに、重さは16kgになります。
このレンズは甲子園のために開発されたレンズのようですね。甲子園のバックスクリーン横から本塁上のプレーを撮影するために開発されました。
SIGMA Art 18-35mm F1.8
SIGMA 標準ズームレンズ Art 18-35mm F1.8 DC HSM ニコン用 APS-C専用 210557
APS-C専用レンズですが、ズームレンズで開放F1.8通しを実現した世界初のレンズとなります。
APS-C専用なので明るくても比較的小型で重さは810gとなります。単焦点ズームレンズという異名を得ています。
SIGMA Art 50-100mm F1.8
SIGMA 大口径望遠ズームレンズ Art 50-100mm F1.8 DC HSM ニコン用 APS-C専用
このレンズもAPS-C専用レンズとなります。換算で75-150mmという中望遠ズームで、開放F1.8通し。
これよりも明るいズームレンズはありません。重さは1490gです。APS-C専用レンズでも流石に重くなります。
もし私がAPS-Cユーザーだったら使ってみたいです。
必ずしも明るいレンズが善ではない
一般的には明るいレンズは良いレンズと言われますが、上記したようにデメリットもあります。なので、自分がその明るさを必要とするのか、よく検討してみると良いでしょう。
個人的なことを言うと、私は大三元ズームレンズという開放F2.8通しの明るいズームレンズを使っていましたが、絞って風景を撮ることが多く、明るさを必要としないことに気がつきました。
そこでF4通しのズームに切り替えました。コスト的にも負担が減り、軽量コンパクトになったのでフットワークも向上。結果的に大正解です。もちろん、逆のパターンで明るさ欲しさにF2.8ズームを導入する方もいるでしょう。
個人々で必要とするレンズ性能は異なります。明るいレンズは良いレンズという単純な意見に流されず、自分が必要とするものをしっかり見極めると良いですね。
まとめ
軽量コンパクトで明るいズームレンズが欲しいです。
14-200mmF1.8で重さ700gくらい。もちろん収差なしで。価格は20万円まででお願いします。
おそらくはNikonだけだと思いますが
マクロレンズ(マイクロレンズ)の
実効F値により、絞り優先モードでも
絞り値が変化するのはZマウントになっても
変わらないのですか?
mickeyさん
あのマクロの仕様、ニコンだけなんですね・・・。なんか使いにくいなと思ってました。
まだZマウントではロードマップ上にマクロレンズすらありません・・・・笑
色んなレンズがあるんですね。私の知ってる人で200mmF1.8のレンズで撮ってる人がいますが、見たことないボケ方をしますね。でもピント面が薄いので慣れてないと失敗写真を量産しそうですが。
しかし15㎏クラスのレンズを支える三脚ってどういうものなんですかね。レンズ付けると完全に戦車のイメージしか思い浮かびません。こういうレンズは完全にネタとしてしか使えませんがシグマの1.8ズームって良いですね。フルサイズ規格は作らないのでしょうか。重くなるんでしょうか・・。
Labattさん
200mmF1.8もあるのですね・・・。調べてみたらキヤノンのレンズですか。一度使ってみたいです。
雲台はジンバル的なのを使うのですかね。
1.8のズームはフルサイズバージョンもありますが、24-35mmF2通しになります。